レッド・ツェッペリン「天国への階段」の“盗作”訴訟はまだ続く・・・ とりあえず今までの経緯を追いかける

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2016年前半で最も大きなレッド・ツェッペリン関連ニュースは、この「Stairway to Heaven」盗作疑惑をめぐる裁判であった。

 

「Stairway」の冒頭に流れるアルペジオの部分について、アメリカのバンド「スピリット」の曲「Taurus」を無断で借用しているのではないかという話は、実は今年になって始まった話ではない。

 

訴訟自体は2014年に起こされており、このブログでもかつてこの話題を取り上げたことがあった(「天国への階段」 著作権侵害の訴えに直面 ランディ・カリフォルニア「トーラス」を聴く - ロックの歴史を追いかける)。

 

6月にようやく判決が出て一件落着かと思ったが、上告されており、今後の成り行きは分からない。

 

とりあえず今の段階でいったんこれまでの経緯をまとめ、今後のニュースに追いついてゆけるようにしたいと思う。

 

 

【スピリットとレッド・ツェッペリンの関係】

スピリットは1967年にロサンゼルスで結成し、翌68年1月にファーストアルバム『Spirit』をリリースしている。

 

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同じ1968年の12月に米デンヴァーで行われたコンサートで、レッド・ツェッペリンはスピリットのオープニングアクトとして登場。

 

これが両者の接点となった。

 

デビューアルバム『Spirit』のリリースから30年経った1996年、このアルバムが再リリースされた。

 

この30周年記念盤のライナーノーツにスピリットのギタリストで「Taurus」の作者であるランディ・カリフォルニアはこんな言葉を寄せている。

 

どうして「Stairway to Heaven」はその2年前にリリースされた「Taurus」とまったく同じに聞こえるんだい?と人々はいつも僕に聞いてくる。

 

レッド・ツェッペリンが「Fresh Garbage」を彼らのライヴで演奏していたことも僕は知っている。

 

彼らは初めてアメリカでツアーをしたとき、僕らのオープニングアクトを担当したんだ。

 

ライヴアルバム『How the West Was Won』でも聴けるとおり、レッド・ツェッペリンのライヴでは長時間にわたるメドレーが演奏されるが、1969年のライヴでのメドレーにはスピリットの「Fresh-Garbage」(アルバム『Spirit』収録)のカバーが含まれていた。

 

なお「Whole Lotta Love」でジミー・ペイジが使うテルミンは、もとはランディがテルミンをアンプの上に置いて使っていたのを見たペイジが、そのまま取り入れたものだという説もある。

 

 

【ランディが死の直前に残した言葉】

この30周年記念盤がリリースされた翌年の1997年、ランディは12歳の息子とともにハワイの海にいた。

 

息子が大波でおぼれそうになったのを見たランディは海に飛び込み救助にあたった。

 

息子は無事に助かったが、ランディは命を落とした。享年45歳。

 

死の直前に応えた雑誌のインタビューでランディは強い調子でこう語っていた。

 

この2曲を聴き比べた人なら誰だって分かるはずだ。

 

俺はぼったくられたと思う。

 

あいつらは何百万と言う金を稼いでおきながら「Thank you」の一言もない。

 

「いくらか君に払おうか」などとは決して言わないんだ。

 

むかつくよ。

 

   

 

【43年後の訴訟】

2014年5月、スピリットのベーシストであったマーク・アンデスと、故ランディの遺産管理人がレッド・ツェッペリンを相手取り訴訟を起こした。

 

著作権侵害を訴え、「Stairway」を収録したアルバムのリリース差し止め、および曲のクレジットにランディを加えることを要求したのである。

 

この訴訟は「Stairway」のリリースから43年もの月日が経過した後に初めて行われている。

 

スピリット側はその理由のひとつとして、それ以前は十分な証拠がそろわなかったことを挙げている。

 

またランディの母親の友人が語ったところによると、「(スピリット関係者は)お金に困っていたが、本件については時効が成立してしまったと考えていた。だから新たにクレジットを得ることができれば金になるだろうと考えたのだ」と述べているらしい。

 

もしこの訴訟でスピリット側の勝訴となったとしても、「Stairway」が過去に稼いだとされる金額(推定5億5千万ドル超)がスピリット側に支払われることはない。

 

しかし、将来この曲が稼ぐ金額の持分相当額はランディ・カリフォルニアに支払われることになるのである。

 

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【裁判の開始】

2年経った2016年4月11日、ロサンゼルス検察は2曲(「Stairway」と「Taurus」)のあいだには十分な類似性があり、スピリットの主張について審議する必要があると決定。

 

5月10日に裁判が開始された。

 

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公判で行われた証言のうち興味深いものを以下に紹介する。

 

ジミー・ペイジには1万枚を超えるレコードコレクションがあり、正確にはLPが4,329枚、CDが5,882枚だという。

 

「Stairway」のコード進行についてペイジは「昔からずっと存在するものだ」と述べ、ディズニー映画『メアリー・ポピンズ』の挿入歌である「Chim Chim Cher-ee」をその例として挙げた。

 

 

 

6月23日、陪審員たちはこの2曲の類似は著作権侵害には当たらないという判決を下し、レッド・ツェッペリン側の勝訴となった。

 

その後7月下旬、原告のスピリット側が上告している。

 

(参考)

Led Zeppelin cleared of stealing riff for Stairway to Heaven | Music | The Guardian

Of course Jimmy Page testified like a rock star in the ‘Stairway to Heaven’ trial - The Washington Post