レッド・ツェッペリンがビートルズを "蹴落とした" ときに行われた悪意あるTVインタビュー
1970年、イギリスの音楽雑誌「Melody Maker」の人気グループ投票で、レッド・ツェッペリンが1位に選ばれた。
それまでは8年連続でザ・ビートルズが1位に君臨していた。
これはビートルズの時代がいったん区切りをつけたこととともに、新しい時代の始まりを表す象徴的な出来事と受け止められた。
この時、ロバート・プラントとジョン・ボーナムがBBCのテレビ番組「Nationwide」に出演し、インタビューを受けている。
冒頭で司会者が「レッド・・・何だって?」と言い放ち、さらにビートルズを「清潔な若者が口ずさみやすい歌を歌って受け入れられた」と好意的に紹介する。
一方、そこに登場してきたのはひげを生やしたプラントとボーナムの二人。
司会者は短いインタビューの間に、ビートルズとの露骨な対比をし、明らかに悪意のある質問を二人に投げかけていく。
しかし二人とも決して感情的になることなく、ボーナムは答えるべきことをていねいに説明し、プラントは少しジョークも交えながら、このインタビューを乗り切っている。
たとえば「Yesterday」は様々なバリエーションで演奏されていました。あなたたちは(ビートルズのように)ミュージシャンとして8年も続くと思いますか?自分たちが革新的だと思いますか?あなたたちの音楽を口ずさんでいる人はあまりいないようですが?
ボーナム:いませんね。でもものごとは変化しているんです。それが根本的なことなんです。まず子供たちが変化し、そして音楽も変化していく。だから受賞者も変化してくのだと思います。
オーケストラが演奏している「Whole Lotta Love」が出ていると思いますが、これはなかなか興味深いですよ。リードヴォーカルのパートをフルートで演奏しています。
あなたのファンはあなたたちの曲を必ずしも口ずさみたいとは思っていないということですか?彼らは私たちの世代よりももっと洗練されているということでしょうか?
ボーナム:そういう意味じゃないです。子供たち、というよりも、一般の人たちと言いましょう。いろいろな人たちがコンサートに来ますから。彼らは演奏を聴きに来ているんです。私たちが何者なのかを見に来ているのではありません。
数年前にさかのぼるけど、ビートルズを見に行ったときは、あれは彼らを見るためであって、何を聴いているかなど気にしていなかったのを覚えています。しかし今は「何者か」ということではなく、「何を演奏しているか」ということなのです。
興味深いですね。個人崇拝はもうなくなったと言われていますから。あなたたちが百万長者かどうかは分かりませんが、今お二人はだいぶ裕福になったはずです。お金を持っているというのはどんな感じですか?
プラント:ジョン(・ボーナム)は笑っていますが、私は週に5ポンド遣っていて、鶏肉を買っていますよ。
それでもたっぷり稼いでいるんですから余るでしょう。
プラント:数シリングだけです。結局、落ち着くところにまとまるものですが、私たちの仕事では何年もツアーを続け、小さな教会のホールで演奏したり、殴り倒されたり、車の中にレンガを投げつけられたりしてきたんです。お金を持つということは、結局のところ、自分たちの仕事が大衆に受け入れられたということを表すひとつの数字に過ぎない。誰もが、どんなに否定してみても、最終的には大多数の人に才能や商品として受け入れられたいと思っているんです。
私たちはもうその段階に来ていると思うので、あとは良いものをつくり出し、「Melody Maker」の人気投票で1位を獲る、等々をやり続けることです。
ロバート・プラント、ジョン・ボーナム、どうもありがとうございました。観客4万人のマディソン・スクエア・ガーデンのライヴ、がんばってください。