"史上最高のギタリスト" ブライアン・メイが語る史上最高のギタリストたち(2020年のインタビュー)

2020年6月初旬、ブライアン・メイが自身のインスタグラムにこんな投稿をした。

 

 
 
 
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Ooouuuw !!! Not advertising of course ... ! But ... buy this fabulous magazine to find out who was voted Number 1 guitarist in the world !!! Bri

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ウォー !!! もちろん宣伝ではない... ! でも ... この素晴らしい雑誌を買って、投票で誰が世界一のギタリストに選ばれたかチェックしてくれ!!! ブライアン

 

日本でも一部メディアで報道されたが、ブライアンはイギリスのギター雑誌『Total Guitar』の「史上最も偉大なギタリスト100人」の一位に選ばれた。

 

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この投票結果について、ブライアンはこの雑誌のウェブサイトでインタビューに答えている。

 

投票結果の中で彼よりも "下位" にランクされたギタリストたちについて語っているが、その語り口は決して思い上がることなく謙虚で、むしろ他のギタリストたちへの尊敬に満ちた言葉にあふれている。

 

「とても幸せだ」という一方で「ギター演奏の面白いところは、評価できないところにある。点数を与えることなどできない」と率直な意見も述べており、彼の穏やかな人柄が感じられるのがうれしい。

 

 

 

Q. Total Guitar誌の「最も偉大なロック・ギタリスト」投票で1位になったことにはあなたにとってどんな意味があるのでしょうか?

ブライアン・メイ(以下、BM): まったく言葉が出ないね。吹き飛ばされたよ。完全に予想外だったと言わざるを得ない。もちろんみんなが私のことをそう思ってくれていることには深く感動している。技術的には、私が偉大なギタリストたちの中に入っているなどという幻想すら抱いていないんだ。

これは、私がやったことが人々に影響を与えたということを物語っていると思うし、私にとって大きな意味があることだ。私は大音楽家であるという意味で自分が偉大なギタリストだなんて言い張るつもりはこれからもない。ただ、自分の心から演奏しようとしているだけであって、それだけのことだ。

 

Q. あなたの後に続いたギタリストたちを振り返ってみましょう。2位はジミ・ヘンドリックスです。

BM: Oh my god! これはとても謙虚な気持ちにさせられるね。ジミはもちろん、私のナンバーワンだ。私は今までもそう言ってきた。私にとっては、彼は今でも何か超人的な存在だ。彼は本当に宇宙人のようなもので、彼がどうやって何をしたのか、私には永遠に分からないだろう。

そしてヘンドリックスを聴き返すたびに、私はワクワクし、呆然として、その感覚を繰り返しているんだ。これに向き合えないからギターを弾くのをあきらめるのか、それとも本当に思い切って夢中になって、自分の体と魂の中にあることを表現してみるのか、どちらになる。ジミから学べることは尽きない。不思議なことに最近では彼の曲を弾くことはほとんどなくなったけど、とにかく自分の中にあるものなんだ。

 

Q. それは多くの人にとっても同じことではないでしょうか?ジミはギター音楽の背景の一部ですから。

BM: そうなんだ。だから、とても光栄に思っている。まさかこの日が来るとは思ってもみなかったよ。親父がいたらきっと苦笑いしていただろう。

 

Q. 投票でランクインした他のギタリストの中にもあなたの心に響く人がいるのではないでしょうか。ヘンドリックスの次はジミー・ペイジですが、彼はあなたにどのような影響を与えましたか?

BM: 彼は私とほぼ同世代だけど、少し年上で、同じ小学校に通っていたんだ。彼は私より2、3歳上だったと思うが、子供の頃はこの年の差は大きい。だからいつも見上げる存在だったんだ。地元の友達だからね。

不思議なことに、今はお互いの近くに住んでいるんだ。私にとって彼は発明の達人だ。私は彼をそう呼ぶよ。そして、彼はヘヴィ・ロックが誕生した時に、ヘヴィ・ロックとはどういうものなのかを定義した、実に大きくて強力な存在だったんだ。ツェッペリンのアルバムは聴き飽きることはないし、これからも飽きないだろう。

私たちは少年時代に自分たちのやりたいことをやろうとしていた。いつかロックスターになって自分たちの人生を生きられるかもしれないと願っていた。だから「Communication Breakdown」や「Good Times Bad Times」を聴いていて、「ああ、神様、彼は私のやりたいことをやっている。自分はあきらめるか、血のにじむような努力をするか、どちらかだ」って思ったんだ。

 

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Q. 同じ学校に通っていたことを考えると、ペイジと自分との間に何か類似点があると感じますか?

BM: リッチモンド、トゥイッケナム、フェルサム周辺(※)には何か特別なものがあるに違いない。なぜならヤードバーズはご存知のようにほとんどのメンバーがそこの出身だからね。彼らのうちクリス・ドレヤとベーシストのポール・サミュエル=スミスの2人は私と同じ学校に通っていた。もちろんザ・ローリング・ストーンズもそうだし、クラプトンもそう遠くないところにいたから、私は信じられないほどラッキーだった。

※ Richmond、Twickenham、Felthamはロンドン西部の地名。

 

Q. 今エリックのことをおっしゃいましたが、彼は投票で4位でしたよ!

BM: やはりエリックは今でも私のヒーローだから、当惑してしまうね。これは素晴らしいことだ。アカデミー賞授賞式のときに言うように「こんな仲間の中にいるのは素晴らしい」という感じだ。なんて素晴らしい名誉だと思うよ。

 

Q. もう一人あなたが興味のあるギタリストは「Star Fleet Project」時代に共演したエディ・ヴァン・ヘイレンで、3位でした。

BM: ああ、エディは無類の存在だ。彼はエレキギターの技術発展の柱の一つとして存在している。彼は素晴らしい男だよ。おかしな話だけど、ロックダウン中に自分の人生を振り返っていたときに私が後悔することの一つは、ある特定の人たちと連絡を絶ってしまったことなんだ。

エディとは長い間話していない。本当に後悔してるよ。彼は素晴らしい男だから、ぜひ何とかしたいと思っているんだ。彼は単に優れたギタリストであるだけでなく、素晴らしい精神の持ち主た。人目をひく優れた精神であり、やっぱり聴いていても飽きることはないんだよ。

それにエディはどんなギターでも演奏できるんだ。これは「Star Fleet Project」()のセッションで覚えているんだが、彼はどんなギターでも関係なく自分の音を出せるんだ!デモの演奏をしている時に彼がベースを弾いてるのを見たんだけど、彼はそれをまさにエディ・ヴァン・ヘイレンの音で演奏した。彼が指でできる演奏には驚かされるよ。

※ Star Fleet Project はブライアン・メイソロ・プロジェクト。1983年4月にエディ・ヴァン・ヘイレンらを迎えてレコーディングが行われ、10月にプロジェクト名と同タイトルのアルバムがリリースされている。

 

 

 

Q. 「Star Fleet Project」を聴いていると、エディの演奏とあなたの演奏には素晴らしい調和があります。互いにとてもよく補い合っているんです。それはあなたの演奏の仕方によるものなのでしょうか、それともあなたのトーンに合わせたものなのでしょうか?

BM: ああ、素晴らしい瞬間だったよ。それは私がいつも懐かしく思い出す瞬間の一つだ。私たちは皆、それぞれのバンド活動の途中でちょっとしたブレイクを過ごしていたときだった。クイーンはしばらく休止状態だったし、ヴァン・ヘイレンはあまり活動していなかったと思うし、私の近所に住んでいたアラン・グラッツァー(R.E.O.スピードワゴン)もあまり活動していなかったので、私たちは一緒にやることにしたんだ。

私が主導をとった数少ない機会の一つで、立ち上がって電話をかけて「いっしょにやらないか?」と声をかけたんだ。当時の私にとっては新しいことだった。かかってくる電話に出ることのほうが普通だったからね。

だから勇気を出して声をかけ、実際にその役割を受け持ち、スタジオでライブ演奏をする。するとこれは完全にライブで、自分たちが耳にしているのはまさにその瞬間に起こっていることだったんだ。信じられないほどスリリングだったよ。

体中を流れるアドレナリンは異常なものだった。そうだ、やはり私たちを一緒にしたのはブルースという音楽だったと思う。エドワードも私もDNAにブルースが流れていて、そこからまったく別のものに展開していったんだ。

でも、特にブルース・ブレイカーズの曲を始めたとき、私らの頭の中にはエリック・クラプトンがいた。そしてクラプトンが尊敬していたBBキングやマディ・ウォーターズなども浮かんでいたと思うんだ。私たちを一緒にしたのはブルースの力だった。エディが「今日は何年もプレイしていないようなプレイをさせてくれた」と言っていたのを覚えている。シンプルに、心から、そういう気持ちで演奏したんだ。最高の時間だったよ。

 

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Q. (Total Guitar誌では)ヘビーメタルのギタリストの投票も行いました。誰がトップになったと思いますか?

BM: ああ、神様!トニー・アイオミかな?

 

Q. その通り!あなたとトニーのコラボレーションの噂が長い間流れていましたが、その可能性はありますか?

BM: 可能性はあると思うよ。私たちは話をすることがとても多い。彼はこの業界で私の最も親しい友人で、何年も前からの付き合いだ。トニーについての本を書こうかと思っていたんだ、彼はいわゆる最高の・・・何と言っていいのか言葉が浮かばないけどね。彼は明るい人間で、優しい性格で、信じられないほど不思議なユーモアのセンスを持った人だ。

そしてもちろん、彼はヘビーメタルの父でもある。彼が成し遂げた。彼がそれを実現させたんだ。さらにそれは彼の指と心でやり遂げたことだった。もともと板金工だった男が、それを実現させたんだ。だから、彼は永遠にそのメダルを身につけるものだと思う。私の意見では、彼がこのヘビーメタルというものを創ったんだ。おそらくほとんどの人がそう思うと思う。実際に投票の結果に出ている!

 

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Q. そうなんです、私たちはこの投票結果に満足しています。人の意見が反映されていると感じられます。

BM: こんなことを言っても気にしないで欲しいんだけど、ギター演奏の面白いところは、評価できないところにある。点数を与えることなどできない。これが私の答えだよ。人が評価してくれたことはとても光栄なことだけど、ギタリストは誰でも自分のスタイルを持ち、自分自身の精神を持っているんだ。

他の楽器でもそうなのかどうかはわからない。しかしギターはおそらく最も表現力のある楽器だと私には思える。誰でもこの楽器を手にし、人に耳を傾けさせる音を出すことができるんだ。だから私らはみんな違うんだよ。この投票結果を見た人が「でも、スティーヴィー・レイ・ヴォーンはどうなの?」とコメントするのが分かる。彼らはみんな正しいと思うよ。「スティーヴ・ヴァイは何位だい?ジョー・サトリアーニは?」と感じるんだ。

虹のように様々なタイプの素晴らしいギタリストたちがいるのだから、彼らを階級分けすることなんかしたくないだろう。彼らが紡ぎ出してくれる特別なものを楽しみたいと思うものだ。とにかく、私はとても幸せだよ!矛盾しているかもしれないが、私はそう感じている。

私にとっては、決して競争ではない。いつも喜びだけなんだ。もし目をくらませるほど素晴らしいギタリストを見ると、私は今でも「あぁ、なんてことだ!」と胸が締め付けられる。「私には無理だ 」と思ってしまう。でも彼らに会ってみると「ああ、ブライアンは俺にはできないことができるからね」なんて言われる。だから私は自分がテクニシャンだとは思わないけど、何かを持っていると思うんだ。何かを持っていると言ってもらえるんだよ。

 

 

 

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