ザ・フー『Live at Leeds』50周年 当時の観客とカメラマンが語る思い出
1970年2月14日、ザ・フーは満員の会場でライヴを行い、その模様がレコーディングされた。
会場はリーズ大学の学生食堂だった。
この音源は3か月後の5月23日にアルバム『Live at Leeds』としてリリースされ、以来「史上最高のライヴアルバム」として50年たった今でも高い評価を得ている。
観客の一人 リーズ大生だったアンダーソン氏
その日このライヴに来ていたエド・アンダーソンはこう語っている。
「鮮明に覚えているよ。バンドは全てを注ぎ込んでいた」。
当時リーズ大学経済学部の学生だったアンダーソン氏はザ・フーの大ファンで、このバンドを初めて見たのは2年前の1968年だった。
「リーズ大学は当時ロック・ミュージックの会場としてはナンバーワンで、毎週のように人気バンドを見ていたし、土曜日はほぼいつもそこにいたものだ」とアンダーソン氏は語る。
数シリングのチケットを求めて土曜日に列を作っていたことを今でも思い出すという。
アンダーソン氏によると、観客はこのザ・フーのライヴがレコーディングされることを知っており、「そこにいた誰もが今でも覚えているだろう」と語っている。
「とても暑くて、私たちはイワシみたいに詰め込まれていたんだ」。
アンダーソン氏は「ギグと呼ばれるコンサートの運営が可能で、学生組合がこのようなイベントを開催できる時代に、この街にいられたことは幸運だった」と言う。
それから50年が経ち、アンダーソン氏は現在、ウェスト・ヨークシャー州の警部補を務め、大学評議会の委員も務めている。
音楽は「今でも私の人生の一部だ」。
ライヴ写真を任されたカメラマン マコート氏
当時17歳だったクリス・マコートは、その晩の写真を撮るためにザ・フーから選ばれたアマチュア写真家だった。
彼にはライヴの撮影経験がなかった。 それにもかかわらず50ポンドの撮影料でライヴの模様を写真に収めるように依頼された。
「リーズ(大学)ではステージはそれほど広くなかったが、自分にできる限りの写真を撮った」とマコート氏は語る。
「かなり非公式なものだった。私はステージのすぐ前に立っていたし、聴衆は活気に満ちていた」。
マコート氏によると、ザ・フーは2時間以上にわたって演奏した。
「あの夜の仕事は大変だったが、自分も経験が浅く何をしているのか分かっていなかった」と回想している。
撮影したカラー写真はライヴアルバムのジャケットに使われる予定だったが、結局どの写真も使われることはなかった。
しかし彼は当日、別のもう一台のカメラとモノクロフィルムを持っていて、自分の記録用に白黒写真を撮っていた。
「ザ・フーのファンではなかったし、ライヴアルバムを買ったこともなかった」と語るマコート氏は、自分が撮った白黒写真をそのまま現像することさえしなかったという。
結局、彼の写真が音楽雑誌に掲載されたり、『Live at Leeds』リイシューCDに収録されたりしたのは1995年になってからだった。
マコート氏のカメラがとらえた当日のロジャーとキース。
最も歴史あるロックのライヴ会場
学生組合のスティーブ・キーブル氏は、ザ・フーが演奏した会場は今でもほとんど変わっていないと言う。
現在でもこのようにライヴ会場として使われている。
「ここは学生食堂だ。ランチを食べている学生の多くは、ここが国内で最も歴史あるロックのライヴ会場の一つであるということに気づかないだろう」。
同大学音楽学部の客員研究員であるサイモン・ワーナー博士は、次のように説明する。
「1970年にザ・フーが演奏したことでこの会場のステータスが確立した。その結果ほかの多くのバンドもここでのライヴを希望し、実現してきた」。
「『Live at Leeds』は何の変哲もない、見分けのつかない茶色の紙パックに入って発売されたが、それはあたかもブートレグであるかのように見せかけるのが目的だったのだ」。
ワーナー博士は、当時は人気バンドが大学に来てライヴをする時代であったことを指摘し、「今はそうではなくなったが、1970年はロックしていたんだ」と付け加えた。