クリームのラストアルバム『Goodbye』を酷評した当時の雑誌「価値のあるアルバムではない」
「ローリングストーン誌が発売当初に酷評した名アルバム10選」というこの記事には、以下の10タイトルが含まれている。
- ジミ・ヘンドリックス 『Are You Experienced』(1967年)
- レッド・ツェッペリン 『Led Zeppelin』(1969年)
- ブラック・サバス 『Black Sabbath』(1970年)
- ニール・ヤング 『Harvest』(1972年)
- ザ・ローリング・ストーンズ 『Exile on Main Street』(1972年)
- ボブ・ディラン 『Blood on the Tracks』(1975年)
- AC/DC 『High Voltage』(1976年)
- クイーン 『Jazz』(1979年)
- ニルヴァーナ 『Nevermind』(1991年)
- ウィーザー 『Pinkerton』(1996年)
まさにロックの歴史を彩る名盤ばかりだが、もう一つ、この雑誌が今では想像できないくらい酷評しているアルバムがあった。
クリームは1968年末に解散コンサートをしてすでにバンド活動を終えており、このアルバムがリリースされたのは年が明けた1969年2月だった。 一応クリーム最後のアルバムということになっているが、リリースのタイミングという点では解散後にリリースされた編集アルバムという印象もある。
それまでの3枚に比べると影も薄いし、これをクリームの最高傑作だという人は聞いたことがないが、それでもクリームというバンドそのものが伝説となった今では、やはり貴重なアルバムであることは間違いない。
しかし当時のローリング・ストーン誌は「かつて名を馳せた大物が落ちぶれ、人知れず死んで行くのに似ている」と、徹底的にこき下ろしている。
“What a Bringdown” 「何たる期待外れだ」。クリームのラストアルバム『Goodbye』の最後を飾るこの曲のタイトルは、アルバム、そしてクリームというバンド全体の混乱を上手く要約している。
ジャック、エリック、ジンジャーには、もっと輝かしい終わり方があったのである。
『Goodbye』はそれほど価値のあるアルバムではない。 音楽評論家たちはこのレコードを破り裂いてしまうだろう。 忠誠心のあるクリームファンですら、落胆を禁じ得ない。 かつて名を馳せた大物が落ちぶれ、人知れず死んで行くのに似ている。 とにかくひどい去り方である。
「I’m So Glad」はスタジオヴァージョンのほうがライヴヴァージョンよりもはるかに優れている。 ジャックとエリックが叫び合いの状態におちいっていて、この曲が持っているメロディが失われてしまっているのだ。
「Politician」は、まず第一に大して優れた曲ではないし、ライヴヴァージョンがオリジナルをより良いものにしているわけでもない。
「Sittin’ on Top of the World」はライヴレコーディングの中では最もいい。 ジャックの説得力のあるヴォーカルと軋るような音を立てるベースが全体を占めているなか、エリックのギターが最後に少しだけ目立ってくる。 すべてがしっかりとまとまっているのである。
スタジオレコーディングの曲には、『Wheels of Fire』をダメにしていたのと同じ欠陥が目立っている。 クリームはブルースを演奏している時が最も優れている。 しかし、スタジオレコーディングの曲はどれもブルースではない。 従って、各メンバーの好みに大きく依存した形で制作されてしまっているのだ。
もしあなたが純粋にシンプルなブルースを聴くのが好きなのであれば、気に入ることはないだろう。 しかし、もしスタジオでのレコーディング技術を喜ぶ人なのであれば、耳を傾けるのにふさわし曲ばかりだ。
「Badge」のエリックはダブルトラックのヴォーカルに助けられており、L’Angelo Misteriosoと名乗る人物によるリズムギターが加えられている。
「Doin’ That Scrapyard Thing」ではフェリックス・パパラーディがピアノとメロトロンを演奏し、「What a Bringdown」でのジャック・ブルースはベースを捨ててピアノとオルガンを演奏している。
レコードを買い、聴き、ポスターを部屋の壁に飾るといい。 少しはノスタルジーに浸ることはできるだろう。 そして静かに涙の一粒でも流してみよう。
エリック・クラプトン、ジャック・ブルース、ジンジャー・ベイカーに対する涙ではなく、クリームに対して。
グッバイ。