詩人アレン・ギンズバーグとポール・マッカートニーのコラボレーション「The Ballad of the Skeletons」とは?

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アメリカの詩人アレン・ギンズバーグは、私たちロックファンにとってはボブ・ディランとの関連でもっともよく耳にする名前である。

 

しかしギンズバーグは死の直前、ポール・マッカートニーとコラボしたことがあった。

 

ギンズバーグは文学や政治については最期まで活発な活動を続けた。

 

1996年、すでに健康状態が悪化していた彼は、自身が書いた詩「The Ballad of the Skeletons」に音楽をつけるというプロジェクトをポールやその他のミュージシャンと実現させている。

 

もともとこの詩は1995年に雑誌「The Nation」上に発表されたものだった。

 

1995年10月、ギンズバーグは英国イングランドにあるマッカートニー一家を訪れた。

 

ギンズバーグはポールたちを前に、この「The Ballad of the Skeletons」を朗読して聞かせた。 その様子はポールの娘の一人が撮影しており、ホームビデオで残っているらしい。

 

ギンズバーグは、ロンドンにあるロイヤル・アルバート・ホールで行われる予定の詩の朗読会にほかの詩人たちと一緒に出演することになっていた。

 

そこで自分の横でギターを弾いてくれる人を探している、とポールにいうと「僕にやらせてみてよ。この詩はすごくイイよ」と前向きな答えが返ってきたという。

 

以下、ギンズバーグの回想である。

 

ポールは当日夕方5時ごろサウンドチェックのために現れた。

彼は自分の家族のためにアルバート・ホールのボックス席を予約していて、4人の子供たちと奥さんがみんなやって来た。

朗読会の間、彼はずっと座って耳を傾けていた。

 

私は誰が自分といっしょに出演するのか、まったく公表していなかった。

その晩も終わりに近づいたとき、ようやく私は彼を紹介した。

するとアルバートホールの中が大歓声で満たされた。

そして私たちはその「歌」を始めたのだ。

 

この動画の冒頭には「Royal Albert Hall 1993」とある一方、YouTubeの説明文には「1995」と書かれていて混同させるが、二人のコラボは1995年10月16日の一度きりであるため動画冒頭の「1993」が誤りであると思われる。

 

 

なおポールがロイヤル・アルバート・ホールの舞台に立ったのは、ビートルズ時代の1963年以来32年ぶりのはずだ。

 

ギンズバーグの回想の続き:

ポールは、もしこれをレコーディングすることがあるのなら連絡してくれと私に言っていた。

彼が参加に前向きだったので、私たちはベースになるトラックをレコーディングし、ポールに送った。

ポールはそれにマラカスやドラムをオーバーダブした。

オルガンもオーバーダブして、初期のボブ・ディランアル・クーパーの効果を加えてくれた。

そしてギターでは、彼は大事な仕事をしてくれた。

こうしてポールが作ってくれたレコーディングが戻ってきて、そこにフィリップ・グラスアメリカの作曲家)がピアノのアルペジオをオーバーダブしたのだ。

 

ギンズバーグはポールがドラムを入れてくれたことを特に喜んでいたらしく、「ビートルズになることが出来た一番の出来事」とティーンエージャーのようにほほ笑んでいた、とマーキュリー・レコードの社長ダニー・ゴールドバーグは語っている。

 

レコーディングはパティ・スミス・グループのギタリスト、レニー・ケイのプロデュースで行われた。

 

ギンズバーグがヴォーカル、ポールがギター、ドラムス、ハモンドオルガン、マラカス、フィリップ・グラスがキーボード、レニー・ケイがベース、他にもマーク・リボーやデイヴィッド・マンスフィールドもギターで参加している。

 

1996年10月マーキュリーがシングルCDとしてリリースしたが、これには2バージョンあった。

 

一つはギンズバーグが書いた言葉そのままの「無修正」バージョンで、もう一つはラジオやTV用に書き直された「クリーン」バージョンである。

 

カップリング・ナンバーもあり、これまたギンズバーグによる「New Stanzas for Amazing Grace」の朗読で、これにはポールやグラスは参加していない。

 

続いてビデオも制作され、これによりギンズバーグはMTVに登場することになる。

 

 

「The Ballad of the Skeletons」のリリースから半年後の1997年4月5日、アレン・ギンズバーグは死去した。享年70歳。

 

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