キース・リチャーズとギブソン・ファイアーバードVII
2015年はザ・ローリング・ストーンズの「Satisfaction」のリリースから半世紀という記念すべき年である。
この曲については歌詞の内容もさることながら、冒頭のリフが「Satisfaction」という曲、1965年という年、そしてローリング・ストーンズというバンドを象徴しているといえる。
キース・リチャーズの演奏するこのリフは、彼のトレードマークになっているフェンダー・テレキャスターで弾かれたものではなく、「ギブソン・ファイアーバードVII」で演奏されたものである、というのが定説となっている。
【ファイアーバードVIIとローリング・ストーンズ】
1965年ごろのキースとブライアン・ジョーンズは、新たなサウンドを追及しさまざまなギターを試していた。
そのうちの一機種がこのギブソン・ファイアーバードVIIで、ブライアンは数本所有していたとも言われている。
このギターには「リバース」と「ノン・リバース」があり、ブライアンもキースもその両方を演奏している写真が残っている。
(ノン・リバースのファイアーバードを弾くブライアン(上)とキース(下))
ブライアンがリバースを弾いているときはキースがノン・リバース、ブライアンがノン・リバースのときはキースがリバース、という「マッチング」で弾いていた、という話も残っている。
当時は二人ともロンドンの楽器店で手に入ったギターを片っ端から試用していたようだが、この「ファイアーバード」については自分たちで買ったものではなく、ギブソン社から贈られたものであった。
【ファイアーバードVIIというギター】
ギブソン社はこの「ファイアーバード」のラインナップを1963年に開始し、その後「I」「III」「V」「VII」の4種類が出されている。
3つのハムバッキング・ピックアップやビブラート・テイルピースがこのギターの特徴で、通常のギターをひっくり返したような形をしているため「リバース」の名前がつけられた。
上記のノン・リバースが出されたのは1965年になってからであった。
【「Satisfaction」のレコーディング】
キースがギブソン社からファイアーバードを贈られた時に、いっしょにアンプ「Gibson Titan V」とペダル「Maestro Fuzz-Tone」も贈呈されており、「Satisfaction」のリフはこれらの機材を使用して演奏されている。
しかしこれらの機材をそろえても、実際のレコードどおりの音は出ないといわれている。
レコードでリリースされたバージョンでは、ファズ・エフェクターの効果にもっと厚みが出るよう、ミックスの段階で音が調整されているからだ。
ギブソン社がファイアーバードをプレゼントする前に、すでにストーンズは「Satisfaction」の初期バージョンをレコーディングしていた。
そのバージョンではハーモニカが使われ、ギターにもファズ・エフェクトはかけられていなかったという。
なおギブソン・ファイアーバードは、近年ではキースではなくロニー・ウッドが弾いている姿がしばしば見られる。