エリック・クラプトンのギター⑦ マーティン・アコースティック ECモデル
エリック・クラプトンのトレードマーク的なギターといえば、エレキはブラッキーをはじめとするフェンダー・ストラトキャスターであるが、アコースティックではマーティンであろう。
マーティンによるクラプトンのシグナチャーモデル「ECモデル」000-28ECと000-45ECについて、クラプトンがコメントしている動画がYouTubeにある。
自らを「流しのミュージシャン」と呼ぶクラプトンが、演奏家としての立場から述べた率直なコメントが聞ける。
以下に和訳を載せた。
(写真は「000-28EC」)
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色もいい、トップやバックの木目もきれいだ。
(000-28と000-45を比べると)それぞれがユニークな音を出す。
000-45をもう一本買ってもいいな(笑)
000-28は丸い感じの音がする一方、000-45は明るい音色で、音量も多少大きめに聞こえる。
私はベーシックなギターも好きだ。
1970年代には000-28をいつも持ち歩いていて愛用していたが、壊れてしまったんだ。
ベーシックなものはある種の道具として使う感じがする。
一方、000-45は000-28より人目を引くデザインになっているから、どちらかと言うと大切に扱おうとしてしまうかも知れない。
分割払いでギターを購入できるが、私もそうやってギターを手に入れた。
最初はそれほどしっかりとした動機があって始めたわけではなかった。
しかし、私はいつも熱心に音楽を聴いていた。とりこになって聴いていた。
そのおかげでもう一歩進んでやってみようという気になったのだ。
10代半ば、16歳のころだった。
マスターしようとがんばって、自分が進歩しているのを感じた。
そのころまでには私はちゃんとしたギターをいくつか見ていた。
誰がどのギターを弾いているか、強く意識していたわけではない。
何かの映像でビッグ・ビル・ブルーンジーが000-28を弾いているのを見た。
もちろんその時は高級品で高嶺の花だったが、憧れるものだった。
(注:ビッグ・ビル・ブルーンジー(1893–1958)はアメリカのブルースシンガーでギタリスト)
他にもギターのメーカーはたくさんある。
でも承認シールのついているのはマーティンならではだ。
これがどれほど重要なのかを理解する過程の問題だった。
ある日ホークウインドのデイヴ・ロックと演奏したことがあった。
(注:「ホークウィンド」はイギリスのロックバンド。デイヴ・ブロックはその中心人物でギターを担当した)
私がそのとき何を弾いていたか覚えていない…ワッシュバーンだったかもしれない。
そのとき誰かが「これを見てよ」と言ったんだ。
しっかりとしたハードケースに入っていた。
私はそれまで(自分のギターを)ただの袋に入れていたのだが(笑)
ケースを開けたら、そこにはドレッドノートのギターが入っていたんだ。
大きな光があふれてきたような感じだったよ。
それくらい貴重で大切なものという感じだった。
誰のギターだったか覚えてないが、ネックを持ったときに感じ取ったのだ。
こういうことを言うのは好きではないが、私の経験から言えば、やはり最も高いギターこそ最も弾きやすいギターだ。
なぜなら演奏するために作られているからで、そのギターを作る理由が100%正しいからなのだ。
だからある程度の演奏能力があるのなら、正統派のギターを手に入れたほうがいい。
そういう経緯があって私はマーティンを手に入れた。
ギターは(演奏家に対して)友好的であるべきだ。
私を何らかの形で助けてくれないといけない(笑)
そうでないと私はそのギターを弾かないだろうね。
スケールの短かった初期の000-45は、1900年ごろにデザインされた小さめのボディで、とても素晴らしくゴージャスなギターだった。
しかし、私には弾きづらかった。
スケールが短くて、動かしづらかったからだと思う。
だから30~40年代の美しいMartin - OMを使ってきた。
『アンプラグド』で演奏したのもそれだ。
あのギターが「ECギター」の原型となった。
ネックで手を動かすときにぴったり合うように作ったものだ。
こうやってようやく私に合うギターを発見した。
私は流しのミュージシャンだから、(私の演奏を聴いた)他の演奏家たちが私のチョイスに反応したのもよく分かる。