ジミ・ヘンドリックスが半年以上かけてレコーディングした「All Along the Watchtower」
ボブ・ディランの「All Along the Watchtower」は1967年12月リリースのアルバム『John Wesley Harding』に収録されている。
ディランはその前の数年間にわたり、いわゆるロックバンドによるエレキサウンドのアルバムを作ってきた。
しかし『John Wesley Harding』から『Nashville Skyline』を経て『Self Portrait』に至る3つのアルバムでは、アコースティックの音楽づくりに戻っていた。
「All Along the Watchtower」もそういった類の曲のひとつで、比較的シンプルなアコースティックギターによるアレンジになっている。
興味深いのは、ジミ・ヘンドリックスというエレキサウンドに革命をもたらした人物がこれを取り上げ、彼にしかできないアレンジに仕立て、それが大ヒットしたということだ。
【繰り返されたレコーディング】
ジミは『John Wesley Harding』のテープをリリース前に手に入れていた。
始めは「I Dreamed I Saw St Augustine」をカヴァーしようとしていた、といわれている。
しかし「Watchtower」のほうがより魅力のあることに気づいた。
とくに最後のミステリアスな歌詞「二人のライダーが近づいてきた/風がうなり始めた」には、彼のエレキギターを唸らせる絶好のチャンスがあったのである。
1968年1月、ジミはこの曲をロンドンのオリンピック・スタジオでレコーディングした。
このレコーディングにはトラフィックのデイヴ・メイスンが12弦ギターで参加していた。
しかしレコーディングの途中でエクスペリエンスのベーシスト、ノエル・レディングが不満を訴えスタジオを飛び出してしまう。
そのため12弦ギターを弾いていたメイスンがベースを引き継いだ。
ジミ・ヘンドリックス本人がベースを弾いたパートもある、という証言もある。
またローリング・ストーンズのブライアン・ジョーンズが「ヴィブラスラップ」というパーカッションで参加している。
マルチプレイヤーのブライアンは初期のテイクではピアノも弾いていたが、ミキシングの過程でピアノの音は取り除かれてしまっているようだ。
こうしてロンドンでのセッションでは20を超えるテイクがレコーディングされた。
その後ジミはそのテープをニューヨークに持って行き、さらにギターをオーバーダブし続けた。
ジミはいつまでも満足することができず、何度もレコーディングが重ねられ、結局1968年6~8月にかけていくつものテイクがレコーディングされた。
【ジミ・ヘンドリックス最大のヒット曲】
ディランのオリジナル「Watchtower」もシングルカットされたが、どの国でもヒットしなかった。
一方、ジミ・ヘンドリックスによるカヴァーは1968年10月、全米チャートの20位にまで上昇し、彼にとってアメリカ最大のヒットシングルとなった。
またイギリスで5位、オーストラリアでは9位の大ヒットとなっている。
しかもその “ジミヘン・ヴァージョン” をディラン本人までライヴで演奏するようになっていることはよく知られていることだ。
1995年9月のインタビューで、ディランはこう語っている。
「(ジミのヴァージョンには)本当に圧倒された。彼はすごい才能を持っていて、歌の中にあるものを見つけ、それを発展させることができる。ほかの人が見つけることなど思いもよらないものを見つけることができるんだ」。
(How Hendrix turned Dylan’s All Along the Watchtower into a hit - theaustralian.com)