ジョージ・ハリスン 「僕の最初のアメリカ製ギター」 グレッチ 6128 デュオ・ジェット 1957年モデル
まだ駆け出しの頃のザ・ビートルズ。ごく初期のビデオとしては比較的良く知られているものだと思う。
この有名な動画でジョージ・ハリスンが弾いているギターは「1957 Gretsch 6128 Duo Jet」。
グレッチのオフィシャル・サイトには、ジョージの所有していたこのギターのシグネチャー・モデルについて詳しい説明がある(GEORGE HARRISON AND THE GRETSCH DUO JET™)。
これによると、ジョージはこのギターをリヴァプールのタクシー運転手から中古で買い取ったようである。
1957年、イヴァン・ヘイワードはクレッチ・デュオ'57の新品をニューヨークで購入した。タイムズスクエアの近くにある小さなギターショップで、210ドルだった。さらにイヴァンはビグスビーのビブラート・ユニット(トレモロ・ユニット)を同じ店で購入し、このグレッチ・ギターに取り付けた。
4年後の1961年の夏、イヴァンは故郷のリヴァプールに戻り、タクシー運転手をしていた。
イヴァンは乗り気ではなかったものの、何らかの理由がって、持っていたグレッチを手放すことにした。リヴァプールのバンド、ザ・デラカードスがイヴァンの運転するタクシーに乗り込んだとき、イヴァンは自分のグレッチを買い取らないか、と持ちかけた。デラカードスは断ったが、仲間に話を広めてみるよ、と約束した。
こちらが「ザ・デラカードス (The Delacardoes)」というバンドらしい。
(出典:LANKYPEDIA OF BANDS)
デラカードスでサックスを吹いていたニール・フォスターは、そのころビートルズでベースを弾いていたスチュアート・サトクリフを知っていた。
そうして話が広まり、持ち主であるタクシー運転手のイヴァンのもとにジョージ・ハリスンから電話があった。
ジョージは黒の革のズボンをはいていたが、一方でとても丁寧な受け答えをする青年だった。ジョージはそのころ「Futurama」というブランドのとても質の悪いギターを弾いていた。本物のグレッチ・ギターを手に入れれば、ジョージにとってはめざましい進歩になるに違いなかった。
その時ジョージは70ポンドしか持っていなかった。イヴァンはグレッチ・ギターを90ポンドで売ろうとしていたが、ジョージがとても熱心で、このギターへとても惚れ込んでいたため、とりあえず70ポンドでジョージに売り、20ポンドの借用書をつけた。
のちにジョージはこの20ポンドを返済している。
このギターはジョージのメイン・ギターとなり、キャヴァーン・クラブやハンブルグでの演奏のみならず、デビューアルバム『プリーズ・プリーズ・ミー』の録音まで使われた。
1987年のインタビューで、ジョージはこのように語っている。
これは僕の最初のアメリカ製ギターだったんだ。中古で買ったけど、よく磨いたんだよ。これを持っていることはとても誇らしいことだった。
その後、ジョージはこのギターをクラウス・フォアマン(ヴォアマン)に譲った。
クラウス・フォアマンはベーシストであり、同時に『リヴォルヴァー』や『アンソロジー』シリーズのジャケットを担当したイラストレーター。
クラウスはこのギターをその後20年以上大切に保管していた。
ジョージはある日、クラウスにこのギターのことについて話をした。
まだ持っているなら僕に戻してくれるかな、って聞いてみたんだ。僕の昔の思い出が詰まっているからね。
クラウスから返してもらった後、ピックアップやスイッチをオリジナルの状態に戻したんだ。
ジョージはその後、自身のヒット・アルバム『クラウド・ナイン』のジャケット撮影のとき、このギターを持ち出し、いっしょに写真におさまった。
こうして、名実ともにジョージの代名詞的ギターのひとつとなった。
ジョージ・ハリスン・シグナチャー・モデルの詳細はこちら:
GRETSCH グレッチ G6128T-GH George Harrison Signature Duo Jet Black