ボブ・ディラン 『シャドウズ・イン・ザ・ナイト』リリースに先駆けて行われたインタビュー
この「AARP」という雑誌に、ボブ・ディランの約3年ぶりのインタビューが掲載された。
まもなくリリースされるニュー・アルバム『シャドウズ・イン・ザ・ナイト』のプロモーションのために行ったものである。
このアルバムはすべてカヴァー曲で占められており、全曲がフランク・シナトラによって歌われていることから、「シナトラ・カヴァー・アルバム」と呼ばれてきた。
(ニュー・アルバムの収録曲については「ボブ・ディラン ニューアルバム『シャドウズ・イン・ザ・ナイト』 収録曲について予習しよう - ロックの歴史を追いかける
」 を参照。)
そのシナトラについて、ディランは語る。
彼は山のような存在だ。
登らなければいけない山 - たとえその途中までしか行けなかったとしてもね。
彼が歌っていない歌を探すほうが難しい。
フランクは人に歌いかける。
人に対して歌うのではないんだ。
私は人に対して歌うような歌手には決してなりたくなかった。
いつも人に歌いかけたいと思ってきた。
以上、出典:Bob Dylan gives first interview in three years to AARP magazine | Grand Forks Herald
また自分とシナトラとの相違点を聞かれて:
私をフランク・シナトラと比べろって?冗談言わないでくれ。
彼と同じ世界で語ってもらえるだけで、素晴らしいほめ言葉なんだよ。
彼に追いつけるかどうか、という点で見れば、かつて誰も追いついたことなどない。
私だけではなく、誰一人そんな人はいないのだ。
今回のような古い歌が若い人たちには「corny」(古臭い、感傷的な)に聞こえる可能性があることは気にならないか、との問いには:
「corny」という言葉の意味は一体なんなんだい?
これらの歌は美徳を歌った歌なのだ。
現代の人たちは、悪徳や虚飾に取り囲まれて生きている。
野心、強欲、そして身勝手さが悪徳の根源なんだ。
遅かれ早かれ、人々はそれを見破らなければいけない。
さもなくば人は生きてゆくことなんか出来ないはずだ。
一方老いを重ねることについて、こんな意見も述べている。
情熱というのは若い人が傾けるものだ。
若い人は情熱的になれるからね。
人は歳をとったらもっと知恵を持つようになる。
つまり、ある程度人生を経験したら、何かしら若い人たちに引き継いでいくものなんだ。
若い振りをしてはいけないよ。
自分を傷つけることになるからね。
最後に、幸せについて聞かれたディランはこう答えている。
多くの人がこの人生には幸せがない、なんて言う。
確かに、永遠に続く幸せなどはないだろう。
しかし自分自身を満たすことができれば、それが幸せを導いてくれるのだ。
その瞬間満足したということ 、例えば「うん、おいしい食事だった」という一言だけで幸せになれる。
もちろん、次の瞬間にはその幸せはなくなっているかもしれないがね。
以上、出典:AARP cover boy Bob Dylan on Sinatra and happiness