リンゴ・スター 1966年に行われたインタビュー「僕たちは決まりきったスタイルのようなものは持っていない」
以下は1966年に行われたリンゴ・スターのインタビューである。
活字となりファンクラブ会報に掲載されたのは1966年12月号であるため、おそらくその年の秋ごろに行われたインタビューであろうか。
当時のビートルズは:
8月5日に『Revolver』リリース。
8月29日にキャンドルスティック・パーク公演をもってライヴ活動を終了。
9月にはジョンは映画『How I Won The War?』に出演、ジョージはインドへ音楽修行。
11月には「Strawberry Fields Forever」などをレコーディング。
そんな頃に行われたインタビューだと思われる。
「今後のプランは?」という質問に「僕たちは決まりきったスタイルのようなものは持っていない」と答えており、この後バンドがどの方向に進んでいくか、本人たちも模索していたころに違いない。
ここでは特にシリアスな意見が述べられているわけではない。
しかしこの記事のインタビュアーはリンゴを「最も親しくなりやすい人の一人」であると述べており、実際そんな彼の人柄がうかがえる内容である。
そして来月の来日公演では、半世紀を経ても変わらぬそんなリンゴに会えるのが楽しみだ。
【Ringo Starr Interview: Beatles Book Monthly, December 1966 - Beatles Interviews Database】
Q. この4年間で自分が大きく変わったと思いますか?
もちろん、変わったよ。
変わらない人なんかいない。
じっとつっ立ったままの人なんかいないだろう。
もしつっ立ったまま何もしなければ、人は老けてしまう。
この4年間は、昔知っていたのとは全然違うものだった。
もちろん、成功する前もいい時はたくさんあったよ。
年がら年中つらいことばかりだったわけじゃないからね。
Q. 今の生活は気に入っていますか?
すごく気に入っているよ。
ここに引っ越してきたときは自分が田舎生活を気に入るかどうか分からなかったんだけど、すごくいいね。
(注:当時リンゴが住んでいたイギリス・サリー州にある自宅のこと)
都会のフラットにはうんざりだよ。リラックスできないんだから。
僕はいつも何らかの理由で追いかけられていたからね。
でもここでは違う。 すべてのものから逃げることができるんだ。
ジョンといっしょに出かけようとしたりしたこともあったよ。
Q. ジョンといっしょに地元のパブにいくのですか?
そうだよ。でも上手くいかなかった。
行き付けの客たちのほとんどは僕たちを受け入れてくれた。
彼らの多くはビートルズのことなんか気にかけないビジネスマンたちだからね。
でも、騒ぎ立てて台無しにしてしまう野郎どもがいつもいるんだよ。
Q. 自宅の裏にあるゴルフコースではプレーしたりしますか?
やらないね。
やってみたいとは思ったけど、入れてくれなかったんだ。
すでに3年間の予約待ち状態で、僕はその最後に加わることになるって言われたんだよ。
中に入り込んで、これは我が家の庭の端っこにある僕のゴルフコースだ、って冗談を言ってやろうかと思ったよ。
Q. キーボードは置いてありますが、ドラムキットはないですね。自宅ではドラムを叩かないのですか?
めったに演らないね。
僕は練習に意味があるとは思わないんだ。
僕はグループといっしょに演奏しながらドラムを学んだ。
屋根裏部屋にこもって一人で6ヶ月練習するときよりも、グループといっしょに5週間練習したときのほうが進歩が早いと思うんだよ。
Q. 息子のザックはビートルズの音楽を好きですか?
ビートルズの音楽とそれ以外の音楽の違いは分かっていないだろう。
でも間違いなく楽しんでいるよ。
レコードにあわせて踊っているからね。
Q. 息子さんをどの学校に通わせるつもりですか?
まだそのことについてはほとんど考えていない。
彼にパブリック・スクールに行ってもらうのはいい考えだと思う。
でも、もし今いっしょに遊んでいる子供たちがみんなふつうの学校に行ったら、ザックは友達といっしょにいられなくなるから変な気分になるだろう。それが問題だよ。
でも彼が学校に上がるころになって、どうなっているかなんて今は分からないよ。
Q. 仕事以外では何をして過ごしているんですか?
「Bricky Builders」の経営をしている。
でもビートルズ以外ではたいした利益は上げていないようだね。
Bricky Buildersは我が家での仕事を仕上げてから、ジョンの家に行って仕事をするし、そのあとはジョージもやって欲しいことがあるはずだよ。
(注:「Bricky Builders」はリンゴが建築家と共同経営していた建設会社。この会社がリンゴのサリーの自宅の改築を行った)
Q. ビートルズの将来のプランはどんな感じですか?
みんなその質問をするよ。
でも答えるのは難しい。僕たちは決まりきったスタイルのようなものは持っていないからね。
僕たちはこの先2年間のやることが決まっていて、それが載っている長いリストがあるけど、人には話したがらず隠している ― みんなこんな風に思っているんじゃないか、と感じるときがあるよ。
でもそれは違う。 取っておきのものを隠している、なんてことはない。
ジョンもポールもジョージも、いつもレコーディングスタジオに入る前に新しい曲を書かなくてはいけないんだ。
あと、僕たちは映画を待っているんだよ。
僕たち自身は映画の脚本を書くことはできない。
どうやっていいか分からないから、誰かが書いてくれるのを待つしかないんだ。
僕たちはそれを読んで、OKかどうか考える。
きっと人々は、なぜ僕たちが新しい映画を作っていないのか分からないだろうね。
それはね、僕たちは「とりあえずもう一本」という感じで映画を作りたくないからなんだ。
脚本家たちはいつも『Help!』の別バージョンばかり持って来るんだよ。