ジョン・レノン『ロックン・ロール』 ポールもカヴァーしている収録曲3曲について
ジョン・レノンのアルバム『ロックン・ロール』は1975年2月にリリースされた。
ビートルズの「Come Together」がチャック・ベリーの「You Can't Catch Me」の盗作だとされ、その出版権を持つモリス・レヴィが訴えを起こした。
最終的には和解による告訴取り下げとなったが、その条件として、モリス・レヴィが出版権を持つ曲をジョンがリリースする、という要求がなされた。
この条件に従い、ジョンはフィル・スペクターとともにこのアルバム製作に取り掛かるが、スペクターはレコーディングが済んだばかりのマスターテープを持ち逃げしてしまう。
マスターテープは元に戻ったが、結局のところジョン自身のプロデュースで完成させ、ようやくリリースの運びとなった。
このように、製作の動機もプロセスもトラブルにまみれたものであったが、40年経った今、私たちにとってはロックのクラシックを勉強するいい機会を与えてくれるアルバムである。
【ファッツ・ドミノ「Ain't That a Shame」】
「Ain't That a Shame」はファッツ・ドミノとデイヴ・バーソロミューによって書かれた曲で、1955年にリリースされた。
最初はパット・ブーンという白人シンガーによってカヴァーされ全米No.1ヒットとなり、それを追うようにドミノ本人のヴァージョンも人気が出てきた。
ジョン・レノンが最初に覚えた曲がこの「Ain’t That a Shame」であったと言われている。
1978年にチープ・トリックは日本武道館でライヴを行い、この「Ain't That a Shame」を演奏した。
同年(アメリカでは翌79年)これを収録したアルバム『Cheap Trick at Budokan』をリリース。「Ain't That a Shame」がシングルカットされ、全米35位を記録している。
ポール・マッカートニーは、1988年に当時のソヴィエト連邦でリリースした『Back in the USSR』にこの曲を収録している。
このアルバムには「Ain't That a Shame」を書いたファッツ・ドミノとデイヴ・バーソロミューによる曲がさらに2曲(「I'm in Love Again」と「I'm Gonna Be a Wheel Someday」)収録されている。
ポールへの影響の大きさをうかがい知ることができる。
【ジーン・ヴィンセント「Be-Bop-A-Lula」】
ジーン・ヴィンセントによる1956年の大ヒット曲。
当時トップスターであったエルヴィス・プレスリーに対抗できる若手シンガーを求めていたレコード会社が、この曲でヴィンセントをデビューさせた。
リリースとともに大ヒットとなり、さらに大西洋を渡ってイギリスでもヒットしている。
ビートルズがデビューする以前にすでにエヴァリー・ブラザーズやクリフ・リチャードらがこの曲をカヴァーしていた。
またビートルズ自身も初期にはこの曲をよく演奏していた。
1962年に ハンブルグの「Star Club」でのライヴ音源が残っており、ここで彼らの演奏を聴くことができる。
ジョンの『ロックン・ロール』からは、アメリカやイギリスでは「Stand by Me」がシングルカットされたが、日本ではこの「Be-Bop-A-Lula」がシングルとしてリリースされた。
ポールが1991年にリリースされた『Unplugged (The Official Bootleg)』の1曲目がこの曲であった。
【バディ・ホリー「Peggy Sue」】
1957年に録音・リリースされた、バディ・ホリーの代表曲。
1978年、ビーチ・ボーイズがカバーし『M.I.U. Album』に収録してリリース、シングルカットもされた。
M.I.U. Album (2000 - Remaster)
また1987年、ロサンゼルスのパルミノ・クラブでジョージ・ハリスンとボブ・ディランがともにステージに立ち、ここで「Peggy Sue」が演奏されたという。
ポールはこの曲の公式リリースはしていない。
非公式ながら有名な レコーディングとしては、1975年に撮影されたといわれる「The Backyard Tapes」で歌っているポールを見ることができる。
ポールの運営する音楽出版会社「MPL Communications」が、バディ・ホリーの曲の出版権を所有していることはよく知られている。