ビートルズ 公式CDリリースから30年 当時の記事を読む
ザ・ビートルズの全カタログが公式にCD化されリリースされたのは1987年2月から。
第一弾として、イギリス版のLPである『Please Please Me』から『Beatles for Sale』までの4タイトルがまとめてリイッシューされた。
もっとも日本では1983年に『Abbey Road』だけがCD化されリリースされているが、本国の許可なしに行われたため販売は中止され、レコード店から回収されるということがあった(らしい)。
以下はアメリカの新聞「The New York Times」紙が「NOW ON CD'S, FIRST 4 BEATLES ALBUMS」と題して報じた30年前の記事である。
2009年にはリマスター盤がリリースされ、さらにはダウンロードでもストリーミングでも聴ける現在となってはCDで聴くビートルズは珍しいことではないが、当時は音楽界で大きなニュースになっていたようだ。
いよいよ明日から、ベビーブーマーたちはお気に入りガジェットであるコンパクトディスク・プレイヤーを、お気に入りの音楽であるビートルズのためにつかうことができるようになる。
ビートルズのデビュー・アルバムとそれに続く3枚がコンパクトディスクとなって明日発売されるのだ。
(訳注:なお、この記事では「compact disc」ではなく「compact disk」と綴っている)
これはアメリカのキャピトルレコードを所有しビートルズのほとんどのレコーディングを管理しているEMIが発表したもの。
ザ・ローリング・ストーンズ、ボブ・ディラン、モータウン・レコードのアルバム、その他1960年代の数多くの音楽がCDで次々に発売されており、ビートルズのアルバムがようやくそれに加わることになる。
CDプレイヤーの価格が下がり、CDの生産量も増加したことから、レコード会社各社は自社のカタログを隅々まで掘り下げている最中だ。
【モノラルのイギリス盤】
『Please Please Me』と『With The Beatles』はともに1963年に、『A Hard Day's Night』と『Beatles for Sale』は1964年にそれぞれイギリスでリリースされている。
曲目とパッケージングはアメリカ盤とは異なるイギリス盤で、今回世界同時にコンパクトディスクとしてリリースされることになる。
これらのアルバムのステレオバージョンはすでに1960年代に登場しているが、このコンパクトディスクではモノラルでリリースされる。
EMIミュージック・ワールドワイドのバスカー・メノン氏は「もともとモノラルとして作られたアルバムです」と語る。
「ビートルズのプロデューサーであるジョージ・マーティンとじっくりと話し合いを行った結果、オリジナルのミックスをそのまま残すということに何ら疑問はない、という結論に達しました。ステレオバージョンはビートルズの意図したものではないのですから、やはりモノラルでリリースされるべきなのです」。
またビートルズのCDはコンパクトディスクが収録できる72分間よりもはるかに短く、30~34分。
メノン氏はアメリカ盤のビートルズのLPはもっと短く、曲数もCDに収録される13~14曲より少ない、と指摘している。
いまのところ、アメリカ盤のLPとカセットテープは従来通り入手可能だ。
【CD化が遅れたのはなぜ?】
最も驚くべきことは、ビートルズのCDが今までリリースされてこなかったということだ。
コンパクトディスクが世に出るとすぐに、ほとんどのレコード会社が過去のベストセラー・アルバムをどんどんCD化してきた。
1984年にEMIの日本法人である東芝EMIが『Abbey Road』のCDをリリースしたことがあった(のちに販売停止)が、この例外を除くと、コンスタントに需要があったにもかかわらずビートルズのアルバムがコンパクトディスクで販売されることはなかったのである。
(訳注:この記事では「1984年」とあるが、幻の日本版『Abbey Road』のリリースは1983年)
レコード業界に関係のある一部の人たちは、ビートルズ(ジョン・レノンの遺産管理人を含む)とEMIが過去の著作権をめぐって法廷で争っていたことがCD化が遅れた原因、と指摘する。
ビートルズの弁護士であるレナード・M・マークス氏によると、この法廷闘争とはビートルズ側が補償的損害賠償5千万ドルと懲罰的損害賠償3千万ドルを求めて訴えているもの。
「EMIはビートルズ側が訴訟を取り下げるように仕向けるため、CDのリリースを先延ばしにしていたのです」とマークス氏。
「(今回のCDリリース)はファンにとっての勝利だと私たちは考えています」
一方EMIのメノン氏は、ビートルズのCDをリリースするのはEMIのCD生産キャパシティが予想される需要に応えられるようになるまで待ちたいと考えていた、という。
EMIは現在イギリスのスウィンドン、アメリカ・イリノイ州のジャクソンヴィル、そして東京(東芝との共同運営)の3つの工場を稼働させている。
「十分な生産容量が確保できない状態のまま、ビートルズのアルバムのような宝庫を開いてしまうのは適切ではないと感じていました」とメノン氏。
「契約状況とは何ら関係ありません。CDにかかる著作権についてはビートルズ側と今でも協議中です」。
【今後の発売予定】
EMIは10月までにさらに8タイトルのアルバムを発売する。
4月には1965~66年にリリースされた『Help』、『Rubber Soul』、『Revolver』、1967年のリリースから20周年となる6月1日には『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』、8月には『The Beatles』(1968年)と『Yellow Submarine』(1969年)、そして10月に『Abbey Road』(1969年)と『Let It Be』(1970年)が、それぞれリリースされる。
これらのCDはステレオでの発売となる。
アメリカでアルバム、イギリスではEPとしてそれぞれリリースされた『Magical Mystery Tour』は、その後CDとしてリリースされる予定。
メノン氏はビートルズCDの生産枚数もレコード店から注文数も明らかにしていない。
しかし店舗からはかなりの枚数が注文されていることが判明している。
タワーレコード・ニューヨーク店のロックCD仕入れ担当者ジョン・クウィンさんは、各タイトルを1,000枚ずつオーダーしたという。
今回より多い注文数だったのは、ブルース・スプリングスティーンの『Live/1975-85』(1,200枚)だけだ。
「すぐ売れてしまうでしょう。週末が過ぎればソールドアウトになると予想していますよ」