スティーヴン・タイラー 「Walk This Way」を語る
エアロスミスは1975年4月8日、『Toys in the Attic (闇夜のヘヴィ・ロック)』をリリースした。
エアロスミスにとって3枚目のスタジオアルバムであり、全米11位を記録するヒットとなった。800万枚の売上を記録し、彼らにとって最大の売上を誇ったアルバムでもある。
このアルバムにはエアロスミスの代表曲のひとつである「Walk This Way」が収録されている。
「Sweet Emotions」に続くセカンドシングルとしてもリリースされ、こちらも大ヒット曲となった。
さらに1986年にはRun-D.M.C.がカヴァー。スティーヴン・タイラーとジョー・ペリーもレコーディングに参加し、こちらもリバイバルヒットとなった。
Run-D.M.C.をスターダムに押し上げたのみならず、1980年代に入りしばらく低迷していたエアロスミスを再びメインストリームに呼び戻したという意味でも、重要なヒットでもあった。
2013年8月、イギリスの音楽雑誌「New Musical Express」はヒップホップの40周年を祝う特集を組み、そこにスティーヴン・タイラーがこの曲について語ったインタビューが掲載された。
「ロック+ラップ」という画期的なスタイルを実現したこの曲と、それを作り上げたバンドへの思いを感じることができる。
出典:Steve Tyler - How I Wrote Aerosmith & Run-DMC's 'Walk This Way' | NME.COM
以下、和訳。
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“吸い込むモノ”が届くのを待っている間、ジョー・ペリーはステージ上にいたので、私は駆け上がり、ジョーとジャムセッションをした。
その時のジャムセッションがあれほどのビッグヒットとなり、自分たちの代表曲になろうとは想像しなかった。
ホノルルでやったサウンドチェックが始まりだった。
とてもリズミカルなものをやったんだ。
ドラマーのジョーイ・クレイマーはファンクバンドと演奏したことがあり、いつもジェームズ・ブラウンを推していた。
彼がファンクをこのバンドに持ち込んだんだ。
そしてジョー・ペリーがそれを取り上げ、「Walk This Way」のリフを考え出した。
あのグルーヴはラップに向いていた。
最初私はあのラップの部分にてこずった。
歌詞を追うというより、リズムを追うことになるからだ。
しかしまずスキャットで歌い、それから歌詞を入れてゆくことにした。
歌詞は玄関広間の壁に書き付けた。
とてもリズミカルなフレーズなので、メロディーラインはなく、「backstreet lover, going under cover」という感じで書いていったのだ。
その当時私はヒップホップについてそれほど知らなかった。
都会のDJたちはいい奴ばかりで、カセットテープをくれたものだ。
私は「ラップが何かってことくらい分かっているぜ」と言ったものだが、本当はとんでもないものだったんだ。
今はラップが好きか、って?
カラダのすみからすみまで好きだ!
最初Run-D.M.C.の連中は、誰一人この歌をやりたがらなかった。
彼らはこの曲が好きじゃなかった。
でも曲のリズムが彼らをとらえてしまったんだよ。
リック・ルービンが電話してきて、「彼らとデュエットしてみないか?」って言ったんだ。
実に簡単に話が進んだ。
彼らの熱意のおかげでそうなったんだ。
(注:リック・ルービン(1963~)はアメリカのレコード・プロデューサー。Run-D.M.C.やビースティー・ボーイズなどのアルバムをプロデュースしてきた。Run-D.M.C.の「Walk This Way」もリック・ルービンによるプロデュースである)
ニューヨークのスタジオでレコーディングしたとき、ビースティー・ボーイズのメンバーもいて、彼らもこの歌の歌詞を唱えて楽しんでいたのを覚えているよ。
それを見て「畜生、俺たちは自分たちの歌をあれほど楽しんだことはなかったのに!」って思ったものだ。
(この曲がラップとロックを融合した最初のものだということについて)信じられないくらい誇りに思っている。
もしこの曲があれほど成功しなかったら、私たちはここにいなかっただろう。
私はいつもエアロスミスというバンドを、そして「Dream On」「Train Kept A-Rollin'」「I Don't Want To Miss A Thing」を演奏できることを誇りに思っている。
自分たちの音楽にはこのような多様性があり、そのおかげでずっと活躍しつづけられたんだ。
エアロスミスというバンドはハードロックという単なる1ジャンルでは収まらないんだ。
ヒップホップをまたやることがあるか、って?
きっとできると思うが、今はエアロスミスのことで忙しいね。
【最新リリース情報】
エアロスミスの最新ライヴアルバム『アップ・イン・スモーク』。
二枚組でディスク1には1973年9月26日にオハイオで行われたライヴ、ディスク2には1978年3月26日にフィラデルフィアで行われたライヴが、それぞれ収録されている。