ビートルズ『ラバー・ソウル』50周年 ジョージとポールの使用楽器を追いかける
1965年6月中旬、ザ・ビートルズはアルバム『Help!』のレコーディングを終えるとそのままスペイン、フランス、イタリアなどをまわるヨーロッパツアーを開始、ついでイギリスのブラックプールでのコンサート、そして8月にはアメリカやカナダなどをまわる北米ツアー、と超多忙な日々を送っていた。
9月にイギリスに戻ったビートルズは、今度は1965年のクリスマスに先駆けてリリースするアルバムの制作に取り掛からなければならなかった。
与えられた時間はわずか1か月。
そして1965年12月3日、『Rubber Soul』がリリースされる。
このアルバムでは、前作『Help!』までとは異なる楽器を取り入れていることが大きな特徴の一つである。
ここではジョージ・ハリスンとポール・マッカートニーが使用していた楽器とその演奏についてみてゆきたい。
ジョージはこのアルバムで、ソニック・ブルーの1961年製「フェンダー・ストラトキャスター(ローズウッド)」を使用しており、ジョン・レノンも同型を所有していた。
これがビートルズがフェンダーのギターを使い始めた最初であるといわれている。
ジョージ曰く:
「ストラトキャスターを手に入れようと決めたら、ジョンも欲しいと言っていた。そこでローディーのマル・エヴァンスに探しに行ってもらったんだ。そしたらこの薄いブルーの2本のギターを抱えて帰ってきた。すぐに僕らはその時レコーディングしていたアルバム『Rubber Soul』で弾くことにした」
ストラトキャスターはこのアルバムの随所で聞こえてくるが、もっともはっきり分かるのは「Nowhere Man」である。
ちなみにジョージが所有していたストラトの番号は「83840」で、1961年後半の日付になっていたという。
【ポールのリッケンバッカー登場】
ポール・マッカートニーは、このアルバムでは「リッケンバッカー4001S」をメイン楽器として使用していた。
前年の1964年、ビートルズがニューヨークにいた際、リッケンバッカー社の人物が彼らのもとを訪れ、その時いくつかのギターモデルを持参してジョンやジョージに試し弾きをさせたことがあった。
翌65年8月にビートルズがロサンゼルスにいた時、同じリッケンバッカー社の人物が再び現れ、今度はたった1本の左利き用ベースギターを持ってきた。
それがこの「4001S」であった。
【シタール】
最も目新しい楽器としては、「Norwegian Wood」でジョージが導入したシタールである。
映画『Help!』に登場したインド人ミュージシャンが演奏しているのを見て興味を持ったジョージは、初めてのシタールをロンドンの楽器店で比較的安価で購入したといわれている。
【「Drive My Car」】
1曲目の「Drive My Car」では、ジョージはフェンダー・ストラトキャスターでベースラインをなぞるようなギタープレイをしており、ポールのリッケンバッカーがそれに重なって聞こえてくる。
またこの曲のギターソロはポールが演奏しており、エピフォン・カジノを使用している。
【「If I Needed Someone」とリッケンバッカー】
このアルバムでジョージは1965年製「リッケンバッカー360-12」も使用している。
ビートルズのツアーでミネアポリスに滞在したときに、このギターを手に入れた。
『Rubber Soul』に収録されているジョージの2曲のうち、「If I Needed Someone」では、このリッケンバッカー360-12を7カポで弾いている。
この曲のジョージのギタープレイは、バーズのギタリストであるロジャー・マッギンが「The Bells of Rhymney」や「She Don't Care About Time」で聴かせるギターに影響を受け取り入れたものだろう、という説がある。
また、一定の音が鳴り続けるインド音楽特有の効果を再現するためにあの演奏をしたのだ、という説もあるようだ。
この曲でのポールのベースは、この後の『Revolver』や「Rain」で聴かせてくれる名演奏を思い起こさせるものがある。
「If I Needed Someone」という曲にとってはさまざまなベース奏法が可能であったが、ポールはアルペジオ奏法を取り入れた。
リッケンバッカー4001S のソリッド・ボディのおかげでパンチの効いたよりクリアな音づくりになり、それはこのアルバム全体をとおして聴くことができる特徴である。
【「Think for Yourself」のベース】
「Think For Yourself」ではポールのベースが2種類の音を出していることがわかる。
ひとつは「Vox AC100」ベースアンプであり、もうひとつはディストーションをかけた通称「ファズ・ベース」と呼ばれるベースサウンドである。
アビーロードの技術者であったケン・タウンゼントという人物が、ディストーションの機材を開発し、ビートルズがこれを多用していたことが知られている。
しかし、ポールが「Vox Tone Bender」と呼ばれる機器を使用していた可能性もある。
すでに1965年初めにはこの機材がビートルズのもとに届けられていたはずだ、というVox社の人物による証言もあるらしい。
【そのほかの使用楽器とアンプ】
ジョンとジョージは、初期に多用していた「ギブソンJ-160E」をこのアルバムのセッションで再び使用していた。
またジョンは1964年製「リッケンバッカー325カプリ」や12弦アコースティックの「フラマス・フーテナニー」を再びスタジオに持ち込んでいた。
フラマス・フーテナニーはジョージが借りて演奏していたといわれている。
ジョージはまたグレッチの「テネシアン」もこのアルバムの随所で演奏している。
ポールは、ベース以外では1962年製「エピフォン・カジノ」やアコースティックの「エピフォン・テキサン」を弾いている。
これら2本とも、ポールの50年後のライヴでも使用されているのはご存じのとおりである。
ポールが使っていたアンプは「Vox AC100」と「Fender Bassman」であり、一方ジョンとジョージは「Vox AC30」と「Vox AC100」を使っていた。
参考:
Guide to the Songs and Instruments Featured on The Beatles' 'Rubber Soul' Album Guitar World