ルービン・”ハリケーン”・カーター氏 死去
ボブ・ディランが1976年にリリースしたアルバム『欲望(Desire)』。
この一曲目に収録されている「ハリケーン」は、殺人の冤罪で投獄されていたプロ・ボクサー、ルービン・カーターの無実を訴えたプロテストソングである。
(ルービン・”ハリケーン”・カーター)
このカーター氏が2014年4月20日、カナダのトロントの自宅で死去した。享年76歳。
1961年、プロ・ボクサーとしてデビュー。その後約5年の間、40試合中KO勝ち19回という活躍ぶりを見せ、当時の最強のボクサーの一人であった。
1966年、ニュージャージーにあるバーで、白人3人が射殺されるという事件が発生した。
現場ではカーターの指紋は採取されておらず、そのほかの証拠も不十分であったが、カーターは容疑者として逮捕された。
その後、弁護士によって事件が起きた時間のカーターのアリバイが提示された。また事件直後にカーター本人もほかの被害者と一緒に病院に運ばれており、その被害者自身がカーターは発砲した人物ではないと証言していた。
しかしながら、「事件の時刻にカーターが銃を持ってバーの外にいた」という証言があったことから、1967年の裁判でカーターは終身刑の有罪判決を受けた。
その後、証言の取り消しがあり再審が行われるなど、裁判は長期化したが、カーターは獄中から無罪を主張し続けた。
1985年に釈放されるまでの実に20年間、カーターは獄中生活を続けたのである。
ディランの「ハリケーン」
カーターが獄中で自伝を執筆し無実を訴えたのを読んだボブ・ディランは、1975年、カーターをサポートするため「Hurricane」をジャック・レヴィと共作。
当時カーターが収監されていた留置所でライブも行っている。
この曲はすでに1975年に完成・録音されており、アルバム収録曲としてリリースされる予定であったが、歌詞の一部の書きなおしが行われたため、急きょ曲自体も録りなおしとなった。
そのためアルバム『欲望』は翌年の1976年にリリースされた。
アルバムリリースののち、カーターのためのベネフィット・コンサートも行っている。