エドワード・ヴァン・ヘイレンが語る「フランケンシュタイン・ギター」とその飽くなき追及の哲学

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ヴァン・ヘイレンを象徴するギター「フランケンシュタイン」は、包帯をぐるぐる巻きにしたような独特のペイントとともに、種々雑多な装置を持ち寄って一体の "モンスター" を作り上げたという歴史も、その名前の由来になっている。

 

以下はエドワード・ヴァン・ヘイレンがこのフランケン・ギターにたどり着いた経緯や、ギターを改造した動機を述べているインタビューである。最後に出てくる、彼の飽くなき追及の姿勢を語った言葉は非常に重みがあって、私たちを啓発してくれるコメントだと思う。

 

 

 

【自分の求めているギターは自分でつくる、というスタイル】

ギターを弾き始めたころ、地元の楽器店に行った。いや、あそこは楽器店ですらなかった。ラジオシャック(※)のようなところで、楽器も販売していたんだ。「ラファイエット・ミュージック」というところだった。

ラジオシャック(Radio Shack):アメリカの家電量販店。

 

そこで私はホロウボディの12弦ギターにほれ込んでしまった。ネックが良かったんだ。それを手に入れてから私がやったのは、そのギターから弦を6本取って6弦ギターにしたことなんだ。ギターは12弦だったけど私は12弦ギターを求めていたわけじゃないからね。

 

店には私が求めているものがなかった。そのときから(自分でほしいものを自分でつくるというやり方は)すでに始まっていたんだ。

 

その後私は新聞配達を始めた。私たちにはお金がなかったし、両親も私たちに楽器を買い与える余裕はなかった。 私は2年半から3年ほど新聞配達をして金を貯め、そうして初めてのギターを買った。 68年製レスポール・ゴールドトップで、P-90のシングルコイルピックアップ搭載だった。

 

続いて私は何をしたと思う?そのギターに手を入れ始めたんだ。 なぜなら私はハムバッカーのピックアップを求めていたからだ。 しかし(カリフォルニア州の)パサディナではハムバッカー搭載のレスポールは手に入らなかったんだ。

 

パサディナの北部に店が一件あって、その店がレスポールを入荷したときすぐに連絡をくれた。「おい、レスポールが来たぞ」ってね。私はすぐにその店に行ったが、「ああ畜生、これはクラプトンが弾いている奴じゃないぞ!」って思ったんだ。ハムバッカーが搭載されていなかったんだよ。

 

だから自分でハムバッカーを探し出して、ノミを使って穴を大きくしてそこにはめ込んだ。上手くはんだ付けして、黒く塗った。こういう変わったことを全部自分でやったんだ。

 

奇妙なことだけど、私はブリッジピックアップは取り替えたが、P-90のネックピックアップはそのまま残しておいた。演奏中は私の右手がブリッジピックアップを隠してしまうため、見た人は「P-90でどうやってあんな音が出せるんだ⁉」って不思議がっていた。彼らにはそれしか見えなかっただけなんだ。私の右手の下にハムバッカーがあることに気づいた人はほとんどいなかった。

 

【ギターに対する執拗なこだわり】

私がストラトキャスターを手に入れて弾き始めると、バンドメンバーはその音を嫌がった。それにハムバッカーを上手く操作できなかったんだ。だからギブソンフェンダーにはめ込むというのは、理にかなったアイデアだった(※)

※「ギブソンフェンダーにはめ込む・・・」:エディはフェンダーストラトキャスターのピックアップを取り外し、ギブソンレスポールES-335のPAFピックアップを取り付けた。

 

私はビブラートアームがお気に入りだった。そしてこのアームを上手く演奏することは、おそらく最も難しいことだった。どうやってアームで出す音を保つか、それを理解しなくてはいけない。

 

ブリッジからチューニングペグまでは、すべてが完璧にまっすぐである必要がある。 トレモロの音がずれてしまう唯一の原因は、摩擦が起きてしまうことだ。ビブラートアームを下げても弦の角度がおかしいと、元の場所に滑るように戻ってしまうのだ。

 

こうしたことの多くは、必然から起こったか、単なる間違いの結果のどちらかだった。偶然の積み重ねなんだ。P-90のネックピックアップを残しておいて、ブリッジピックアップで音を出したのも、意図してやったものではなかった。ただ単に、5-Way ピックアップ・セレクターにどうやってワイヤーをつなげればいいか分からなかっただけなんだ。あまりにも複雑だったからね。

 

たとえば「シャークギター」と呼んでいるアイバニーズのデストロイヤーのときも同じだ。このギターにはピックアップが二つ付いているけど、やはりピックアップ・セレクターにどうやってワイヤーをつなげればいいのか分からなかった。だからポットに直接つなげてガーンっとやってみたんだ。

 

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【手元にあるもので満足できないなら、自分で変えていく】

もし手元にあるもので満足しているんなら、それでいい。しかしもし満足していないのなら、自分で何かやってみなくちゃダメだ。私は何に対してもこの姿勢でやってきた。私のクルマでも、何か気に入らないところがあるなら私は満足できるまで変えようとするんだ。

 

 

 

出典:Eddie Van Halen: How I Built My Frankenstrat Guitar