ボブ・ディランが1969年ワイト島フェスで3年ぶりのカムバック(そしてザ・フー)

1969年のワイト島フェスティヴァルは8月29~31日にかけて行われた。

 

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観客動員数は合計15万人。 ボブ・ディランザ・バンドザ・フー、フリー、ジョー・コッカーらが出演した。

 

ワイト島のフェスティヴァルはすでに第1回目が前年の1968年に行われており、また翌1970年も含め3年連続で行われている。

 

ワイト島については1970年のフェスティヴァルが伝説として語り継がれてきた。ジミ・ヘンドリックスやドアーズが出演し、またドキュメンタリー映画も制作されたことがその大きな理由だった。

 

しかし1969年もその前年の第1回目と比べ規模も大きくなり、またボブ・ディランが出演したため歴史的なイベントとして語り継がれている。隠遁生活を送っていたディランが約3年ぶりに公の場に姿を現すということが大きなニュースになっていた。

 

 

 

約3年ぶりのステージ 

しばしばワイト島フェスティヴァルは同じ8月にアメリカで行われたウッドストック・フェスティヴァルと比較される。しかしワイト島フェスのほうが規模は小さいがマネージメントがうまく機能しており、トラブルなくスムーズに進行したと言われている。

 

そのころボブ・ディランは1966年7月のバイク事故以来、その消息がほとんど聞こえてこなかった。

 

当時ニューヨークのウッドストックに住んでいたディランは、「地元」で開催されたウッドストック・フェスティヴァルには参加していない。 声がかかったにもかかわらずディランが断った、という説が有力のようだ。

 

イギリスのワイト島についても声をかけられたが、ディランはそんな島の名前など聞いたことがなかったため、自分のカムバックコンサートの場所としては乗り気ではなかったらしい。

 

主催者による説得が数週間にわたって行われ、そのときに見せられたワイト島の文化・文芸を紹介する映像にディランは感銘を受けた。 そしてこの島へ家族旅行と兼ねて訪れることを約束し、フェスティヴァルへの出演が決まった。

 

久々のディランのライヴということもあり、記者会見には大勢のプレスが詰めかけた。 

 

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リハーサルはワイト島のベンブリッジという場所でザ・バンドとともに行われ、そこにはジョージ・ハリスンが訪ねてきた。

 

さらにディランが出演する日の前日である8月30日になると、ジョン・レノンリンゴ・スターも合流。 キース・リチャーズエリック・クラプトンもあらわれた。

 

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こうした経緯もあって、31日のディランのステージにビートルズのメンバーが登場するのではないか、といううわさが流れたらしく、これもディランの出演が大きくクローズアップされる原因となった。

 

1966年のツアーまではいつも黒を基調としたスーツを着ていたディランだが、この日はクリーム色のスーツで登場する。

 

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そして当時の最新アルバムであった『John Wesley Harding』や『Nashville Skyline』の収録曲を演奏。 またそれ以前の「Maggie's Farm」「Highway 61 Revisited」「Like a Rolling Stone」などをスローバージョンにアレンジして歌い上げている。

 

セットリストは以下の通り。

  1. She Belongs to Me
  2. I Threw It All Away
  3. Maggie's Farm
  4. Wild Mountain Thyme
  5. It Ain't Me, Babe
  6. To Ramona
  7. Mr. Tambourine Man
  8. I Dreamed I Saw St. Augustine
  9. Lay, Lady, Lay
  10. Highway 61 Revisited
  11. One Too Many Mornings
  12. I Pity the Poor Immigrant
  13. Like a Rolling Ston
  14. I'll Be Your Baby Tonight
  15. The Mighty Quinn (Quinn the Eskimo)
  16. Minstrel Boy
  17. Rainy Day Women #12 & 35

この中から「Like a Rolling Stone」「The Mighty Quinn (Quinn the Eskimo)」「Minstrel Boy」「She Belongs to Me」の4曲が、翌年ににリリースされた『Self Portrait』に収録された。

 

また2013年にリリースされたブートレッグシリーズ Vol. 10 『Another Self Portrait (1969–1971)』のデラックス・エディションにこの日のライヴの完全版が収録されている。

 

 

ザ・フーの場合 

ザ・フーにとってはツアーの最中に参加したフェスティヴァルだったため、そのツアーのセットリストをそのまま演奏した。

 

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その年の5月にリリースされた『Tommy』を引っさげて全米をツアーした後、本国イギリスにもどってきたところだった。 その全米ツアーの途中でウッドストック・フェスティヴァルにも出演している。

 

ワイト島での演奏曲目は「Heaven and Hell」で始まり「I Can't Explain」「Fortune Teller」「Young Man Blues」と続き、その後『Tommy』をほぼ全曲演奏。

 

最後は「Summertime Blues」「Shakin' All Over」「Spoonful」でいったんステージを去り、アンコールで「My Generation」と「Naked Eye」を演奏している。