エリック・クラプトンの "クリーム・ギター" 「ギブソン ES-335」の歴史を追いかける

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5年前にもこのブログで「ES-335」についてふれたことがあった(「エリック・クラプトンのギター② ギブソンES-335」)が、もっと詳しいことが分かったので、あらためてこのギターの歴史を追いかけたい。

 

"クリーム・ギター" の誕生 

エリック・クラプトンがこのギターを購入したのは、まだヤードバーズに在籍していた1964年だった。 しかし実際にメインのギターとして弾き始めたのはクリーム時代の1968年ごろだといわれている。

 

ギターケースに大きく「CREAM」と書かれていたため、通称「クリーム・ギター」とも呼ばれていた。

 

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このギターのネック・ヘッドの裏側には、ジョージ・ハリスンからもらった "ハレ・クリシュナ" の切手が貼られている。

 

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1968年といえば、クラプトンはすでにクリームのギタリストとして世界的な名声を獲得していた。さらにはそのクリームが解散してしまう年でもある。

 

その解散コンサートで「Crossroads」を歌っているときも、このES-335を弾いていた。

 

   

 

この動画は1968年11月26日、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで行われたいわゆる「クリーム解散コンサート」だが、この日のライヴは当日に2回行われている。

 

そのうちES-335を演奏しているのは2回目で、1回目のライヴではギブソン・ファイヤーバードのリバースモデルを演奏していた。 

 

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クリームのレコーディングでは『Goodbye』に収録された「Badge」で演奏しているのがES-335であると言われている。

 

その後も愛用し続けたES-335 

ザ・ローリング・ストーンズの『ロックンロール・サーカス』でジョン・レノンキース・リチャーズと結成した一夜限りのスーパーグループ「Dirty Mac」でも、このES-335を演奏していた。

 

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さらにクリーム解散後の1969年に短期間活動したブラインド・フェイスでも、ES-335がひんぱんに演奏されていた。

 

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1970年代に入ってからもステージでしばしば演奏していたことが確認されており、ツアーに出るときは必ず持っていたものと思われる。

 

1980年代になると、ES-335はレコーディングで使われるようになる。 たとえば1989年の『Journeyman』に収録されている「Hard Times」で演奏しているのがこのギターだった。

 

『Unplugged』の大ヒットの後『From the Cradle』をリリースしたクラプトンは、1994~95年にかけて「Nothing But Blues Tour」を行う。このステージで再びES-335が演奏されるようになった。

 

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クラプトンが最後にこのギターをステージで演奏したのは1996年6月29日、ロンドンのハイド・パークで行われたプリンス・トラスト・コンサートだった。

 

下の動画はその "クリーム・ギター" による最後のステージパフォーマンス。ES-335の抜群のサウンドでクラプトンが名演奏を聴かせてくれる。 

 

   

 

84.7万ドル で落札

この最後のステージから8年後の2004年6月24日、クラプトンが運営に関わっている更生施設「クロスロード・センター」のためにギターオークションが行われた。

 

ここに出品されたES-335は84万7,500ドルで落札された。この落札額は、2015年にジョン・レノンエレアコ「J-160E」が241万ドルで落札されるまでギブソン社製のギターでは最高落札額だった。

 

オークションの翌年8月、ギブソン社は落札者であるギター・センターとクラプトン本人の協力のもと、ES-335のレプリカ250本を限定発売した。

 

Eric Clapton Crossroads ES-335」と呼ばれたこのレプリカは、細部にわたってクラプトンが使用していた実物とまったく同じ仕様で作られている。

 

ギターケースには実物同様「CREAM」とペイントされ、クラプトンがサインしたラベルが各ボディの内部に貼られていた。

 

この250本の収益の一部も、クロスロード・センターに寄付されている。

 

 

 

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