リンゴ・スター 1969年1月のインタビュー「人々の望むものに合わせてずっと生きているわけにはいかない」

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以下は1969年1月21日に行われたリンゴ・スターへのインタビュー。その数日後にBBCラジオ1で放送されたものである。

 

1969年1月はビートルズが「Get Back」セッションをしている真っ最中だった。インタビューの日はいわゆる「ルーフトップ・コンサート」の10日前にあたる。

 

Get Backセッションがビートルズにとって最悪の状態だったことはよく知られており、それは「地獄だ、地上で最も惨めだ」(ジョン・レノン)や「全キャリアで最低」(ジョージ・ハリスン)などという残されたコメントが物語っている。

 

当時のメディアにビートルズのこの状態がどこまで漏れ伝わっていたのかは分からないが、リンゴへのインタビューはそのときのビートルズの状態を問う率直な質問から始まっている。

 

いわゆる解散直前の、明らかに上手く行っていなかったバンドだったにもかかわらず、リンゴは4人は仲間だと明言しているところが興味深い。

 

 

 

Q:先週はビートルズにとって実に波乱万丈な1週間でした。

リンゴ:そうだね。

 

Q:今でもお互い親しいんですか?昔ほど仲良くないという報道もあります。またビートルズはみんなが思っているほど金持ちじゃないとか、アップルを閉鎖するかも知れないとか。

リンゴ:えっと、一度に一つの話にしようよ。

 

Q:そうですね。

リンゴ:じゃあ最初の質問は? (笑)

 

Q:今でもお互い親しんですか?

リンゴ:昔の有名なことわざでも「人はいつも愛する人を傷つけるものだ」っていうじゃないか。僕たちは今でもお互いが好きだし、みんなそれをよく分かっている。それでもときどき傷つけ合ってしまうものなんだ。分かるだろう。お互いを誤解してしまい、そこから先へ進んで、今まで以上のもっと大きなものを築き上げる。そしてそこに戻ってきて、いっしょに乗り越えていく。こういうことなんだ。解決していくものなんだよ。だから今でも僕たちはお互いとても親しい仲間だ。次の質問は何だっけ?

 

Q:ビートルズは今と同じように将来も長く続くと思いますか、それとも近いうちに分裂してしまうと思いますか?

リンゴ:「分裂」という言葉で何を意味しているかによるね。

 

Q:別々の方向に進む、という意味です。

リンゴ:完全にNoだ。僕たちは決して・・・いや、「決して」とは言えない。でもね、このアルバムのあとに別々の方向に進んでしまうということはない。この後もみんな何らかの形でつながり続けていくんだ。すでにたくさんの紙にサインしているんだよ。その紙には僕たちが今後20年間ほどいっしょにやり続けると書いてある。

それにアップルの閉鎖なんていうのは馬鹿げたことだ。今までたくさんのお金をつぎ込んできた。僕たちはみんなが思っているほど稼いでいないんだ。僕たちが100万稼いでも政府が90%を持って行ってしまって、結局手元には少しか残らない。それに僕たちは自分たちがどれくらいお金を使ってきたか分かっていなかった。たとえばもし10,000を使うためには、120,000稼がなくちゃいけない。でも僕たちは120,000使ってしまっていたんだ。だから今僕たちがやっているのは個人のマネーと会社のマネー両方を引き締めることだ。単に手渡しでどんどんと手放しているわけじゃないんだよ。まず自分たちの整理ができるまで削減をして、ビジネスとして立て直すんだ。

 

Q:お金に関して不注意だったと感じますか?

リンゴ:そうだったと思うよ。でも破産したわけじゃない。新聞では僕たちはとても裕福な人たちということになっている。でも紙幣をどれくらい持っているかってことになると、中途半端な豊かさなんだ(笑)。

 

Q:世間の見方について気にしますか?あなたたちの人気は以前ほどではない、という意見もあるようですが。

リンゴ:いいや、そんなことないよ。僕たちが始めたころは小ぎれいなモップトップで、行儀のいい若者だったんだ。みんな僕たちのことが好きだった。でも突然、みんなの理解できないことが出てきた。彼らにはよく分からず、好きになれないことが出てきたんだ。そのせいで僕たちから離れていく人もいた。でも今でも僕たちはとても人気があると思う。

今は僕たちは大人の男性になった。始めたばかりのときの若者より少し成長したんだ。僕たちにはやりたいことがたくさんある。やらなくちゃいけないこともある。人々がどんなことを言おうが関係ないよ。人々の望むものに合わせてずっと生きているわけにはいかない。「She Loves You」を演奏している4人の小ぎれいなモップトップとして永久に続けていくことなんかできないんだ。

 

Q:あなたは一番勤勉なビートルのように見えますが。

リンゴ:違うよ、いちばん怠け者だ。

 

Q:そうですか?

リンゴ:分かるだろ?それが僕のイメージだから。 (笑)LPを完成させてのんびりできるのがすごくうれしい。のんびりして、家で子供や妻とリラックスできるのが楽しいんだ。

 

 

 

(出典:Ringo Starr Interview: London 1/21/1969