ボブ・ディランとジョニー・キャッシュ 1969年の共演とそれまでの経緯

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ボブ・ディランジョニー・キャッシュはすでに1960年代前半に出会っていた。二人がディランのピアノに合わせて歌っている様子をとらえた、おそらく1965年のものと見られる映像が『No Direction Home』にも含まれていたのを記憶している。

 

しかしその以前から、二人はお互いを意識し、影響を与え合っていた。

 

2003年にキャッシュが亡くなったとき、ディランは「もちろん、彼が私のことを耳にする前から私は彼を知っていた」とコメントしている。

 

1955年か56年だったが、「I Walk the Line」が夏のあいだずっとラジオから聞こえていた。あの曲はそれまで聞いていたものとは違っていた。あのレコードはまるで地球のど真ん中からくる声に聞こえた。とても力強く感動的だった。

 

その若きディランが1962年に音楽シーンに登場すると、キャッシュは衝撃を受けた。「1960年代初め、私はフォークミュージックに深く入れ込んでいた」とキャッシュは自伝に記している。

 

様々な時代や地域のアメリカ人の生活を歌った正統派の歌のみならず、当時のいわゆるフォークリヴァイヴァルの新しい歌まで私の興味は及んでいた。 

私は1962年の初頭にボブ・ディランのアルバムが登場したとき彼をすぐにチェックし、63年には『The Freewheelin' Bob Dylan』を繰り返して聴き続けた。ツアーに行くときにはポータブルレコードプレイヤーを持ってゆき、楽屋で『Freewheelin'』を聴き、ステージに出て自分のショーを行い、楽屋に戻るとまたこのアルバムを聴き始めたのだ。

 

そしてなんとキャッシュの方からディランにファンレターを送り、そこから二人の文通が始まったという。

 

1964年、ニューポート・フォーク・フェスティヴァルで二人は初めて会った。キャッシュはディランに自分のギターをプレゼントした。ギタリストが自分のギターを贈るというのは、尊敬と憧れの表明である。

 

伝説の「ナッシュヴィル・セッション」

5年後の1969年、ディランは9枚目となるスタジオ・アルバムのレコーディングでナッシュヴィルにいた。同じスタジオではキャッシュもレコーディングをしていた。

 

2月17日と18日の2日間、二人はセッションを行い、10曲以上のデュエットをレコーディングしている。その中の1曲がディランの「Girl From the North Country」であり、『Nashville Skyline』に収録された。

 

ほかのデュエット曲は正式にリリースされていないが、ファンの間では海賊盤で出回っており、たとえば「One Too Many Mornings」などもその中に含まれているらしい。

 

『Nashville Skyline』がリリースされてから数週間後、ディランは「The Johnny Cash Show」に出演し、二人で「Girl From the North Country」を歌っている。収録は1969年5月1日に行われた。さすがのディランもこのテレビ出演には緊張していたと言われている。しかしそのパフォーマンスは高い評価を受けた。

 

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キャッシュは後に「私は特になんとも感じなかった」と語っている。

 

「しかしあの番組を観た人はみんな、今まで聴いた中でもっとも魅力的でパワフルなものだったと言っていた。みんなあの興奮と魅力とを称賛していた。私がやるのはただあそこに座って、Gコードをかき鳴らすだけだったんだ」。

 

 

 

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