ローリング・ストーンズ『Blue and Lonesome』 プロデューサーが語る「壁にぶち当たった」制作経緯

ザ・ローリング・ストーンズが12月2日にリリースするニューアルバム『Blue and Lonesome』は、ミック・ジャガーキース・リチャーズの“グリマー・ツイン”とドン・ウォズの共同プロデュースで制作された。

 

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収録曲のすべてがカバー曲で占められるのは、1964年にリリースされたデビューアルバム以来のことである。

 

同じ64年にリリースされたアメリカでのセカンド・アルバム『12×5』では、すでにジャガー/リチャーズによる3曲、“ナンカー・フェルジ”(ミックとキース以外のメンバーも含めたソングライティングチーム)による1曲が収録されている。

 

ボブ・ディランの最近の2枚、ポール・マッカートニーの『Kisses on the Bottom』(2012年)、エリック・クラプトンの2010年代のアルバムなど、オリジナル作品で知られる大御所たちがカバー曲を歌い上げる例は少なくない。

 

しかし彼らは近年もコンスタントにスタジオ・アルバムを出し続けているという点で、ストーンズとは異なる。

 

11年間待ち続けたのにカバーアルバム!?と感じたファンもいたのではないか。

 

 

 

【カバーアルバムになった経緯】

ドン・ウォズがBBCのインタビューで語ったところによると、この新作についても当初はミックとキースが書き下ろした新曲だけで1枚のアルバムを作る予定だった。

 

ところがスタジオでのレコーディングが上手くいかず、結局カバーアルバムが仕上がったということらしい。

 

ウォズは以下のように語っている。

 

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「私たちはスタジオに入り、新曲をいくつかレコーディングし始めた」

 

「3日目くらいになると、壁にぶち当たってしまったんだ・・・そしてキースがもう一度一から始めるために、リトル・ウォルターの「Blue and Lonesome」を演奏しようと提案した」

 

「幸運なことに、その時テープを回していたんだ。その出来は素晴らしいものだった」

 

「「Blue and Lonesome」の3分30秒の間に部屋のムードは一気に変わった。そして「もう一丁行ってみよう」となり、さらにもう一曲、と続けていった」

 

ストーンズは自分たちが大好きでよく知っている曲を演奏した。自然発生的に演奏し始めた感じだった。その日のうちに6曲がレコーディングされた」

 

ロンドンにあるブリティッシュ・グローブ・スタジオで行われたこのレコーディング・セッションでは、3日間にわたり合計12曲がレコーディングされた。

 

「彼らはこの種の音楽をとてもよく知っている。アルバム収録曲のほとんどが、彼ら音楽活動を始めたばかりのころにリッチモンドのパブで演奏していたものばかりだ。つまり彼らにとっては、習性として身についているような音楽なのだ」

(注:リッチモンドはロンドンの南西に位置する地区。1963年、ここにあったライヴハウス「Crawdaddy Club」でストーンズは人気を得て有名になった。後にヤードバーズもこのライヴハウスで定期的に演奏していた) 

 

 

 

エリック・クラプトンの参加】

もうひとつ話題になっているエリック・クラプトンのレコーディング参加については、以下のように語る。

 

エリック・クラプトンは隣の部屋でレコーディングをしていた。彼はひょっこりやって来て、(その場のストーンズの様子を目にした人なら)誰もが示すような反応をしていた。すっかり驚いていたんだ。ローリング・ストーンズが部屋の中で円を組んで、アンプがうなっているのを想像してみて欲しい」

 

「この光景を見たクラプトンは、まだティーンエージャーだったころにリッチモンドまでストーンズを見に行ったことを思い出したんだ。彼はちょっと恐る恐る入ってきて、そしてキースのギターのひとつを手に取り、いっしょに演奏し始めた。あれは素晴らしい光景だった」

 

エリック・クラプトンは「Everybody Knows About My Good Thing」(リトル・ジョニー・テイラー)と「I Can't Quit You Baby」(オーティス・ラッシュ)の2曲で参加している。

 

ところで、「上手くいかなかった」というオリジナル曲はどうなるのだろうか?

 

ウォズによれば、ストーンズはオリジナル曲のアルバムを完成させるプランを放棄したわけではない、という。

 

「キースもミックも優れた曲を持っている。これで終わりなんてことはまったくない」。

 

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