エリック・クラプトン 2016年4月に来日 ツアーの引退は本当なのか?
エリック・クラプトンが2016年4月に来日公演を行うことが発表になった。
今回は日本武道館のみで5回の公演が予定されている。
【“最後の来日公演”は本当か?】
2年前の2014年2月に来日した際、これが最後の日本公演になるという噂が流れていた。
このとき、クラプトン本人や主催者側からその旨の明確なコメントは発表されていなかった。
しかしその前に「70歳になったらツアーをやめる」と述べたことが報じられており、翌2015年3月に70歳になることから、あの来日公演が最後になるだろうというのが、われわれファンの間で噂されていたのである。
このときの来日記念プログラムの表紙見開きに掲載されたクラプトン本人のコメントでも、このツアーが「さよならツアー」かも知れず、感謝を述べるとともにお別れを告げ、もう戻ってくることがないかも知れない、とはっきりと述べている。
またこのプログラムの内容も、ヤードバーズ時代から2013年までのツアーの全てのライヴ日程が記録されており、「クラプトン史」総集編といったつくりとなっていた。
しかし、クラプトンは「ライヴ活動」そのものから引退する、と言ってたのであろうか?
【英語の「tour」と「residency」】
ここで気になるのは「ツアー」という言葉の本来の意味である。
「tour」という英語は、複数の目的地を順番に回ってゆくことを表す。
たとえば東京以外に大阪、名古屋、福岡と回るのであれば、それは「ジャパン・ツアー」と呼ぶ。
また日本では東京のみでライヴを行っても、そのあと香港、台湾、シンガポールと回り、加えて時差のあまりないオーストラリア、ニュージーランドなどに立ち寄るアーティストも多いが、この場合は「アジア・(オセアニア・)ツアー」などと呼ぶことができる。
しかし、ひとつの目的地に行ってそこから帰ってくるだけであれば、ツアーという言葉は使われない。
つまり言葉の定義で考えると、クラプトンが2016年4月に行う日本公演は「ジャパン・ツアー」と呼ぶことはできないものとなる。
こういう種類の公演活動は、英語では「residency」(滞在、居住などの意)という言葉で表されている。
たとえば、先日来日公演を終えたばかりのエルトン・ジョンは、毎年ラスヴェガスの「シーザーズ・パレス」という会場で数十回にわたるショーを行っている。
このような、ひとつの会場で複数回にわたって続けて行われる公演活動は「residency show」と呼ばれる。
実際、クラプトンの公式ウェブサイトにはこう記されている。
「エリック・クラプトン&ヒズ・バンドは2016年4月に日本へ向かい、東京の日本武道館で5夜のresidencyを行うことになりました。ECの日程には他の日本の場所は追加されません」
(Eric Clapton and His Band will head to Japan in April 2016 for a five-night residency at Tokyo's Nippon Budokan. Additional Japanese cities will not be added to EC's itinerary.)
そして「TOUR」のページに行くと、「No upcoming dates.(予定なし)」となっている。
【「ツアー」はやはり引退】
これらの情報をあわせて考えると:
★ エリック・クラプトンはかつての宣言どおり、すでにツアーを引退している。
★ しかしライヴ活動は、従来ほどの頻度ではないものの、引き続き行っている。
★ 2015年は、ニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデンと地元のロイヤル・アルバート・ホールという、クラプトンのライヴでは定番となった会場でそれぞれ2夜と7夜にわたってresidencyを行い、自身の70歳を祝った。
(加えてイギリスのハイ・ウィカムという場所でも1回ライヴを行っている模様)
★ 明けて2016年には日本武道館というもうひとつの「定番会場」で5夜にわたるresidencyを予定している。
という「解釈」は十分成立する。
スローハンド・アット・70 - エリック・クラプトン・ライヴ・アット・ザ・ロイヤル・アルバート・ホール
【ツアーではないライヴは続けるのか】
しかしこれも希望的解釈に過ぎない。
一部では「音楽活動からは引退しない」が「これからはスタジオでのレコーディングに専念したい」という発言をしている、とも報じられている。
もしこれが本当だとすると、やはりライヴ活動そのものから身を退くことも考えているようにも聞こえるのである。
少なくとも日本に来るのは、もう最後という可能性も否定できないかもしれない。
エリック・クラプトン / プレーンズ、トレインズ&エリック ~ ジャパン・ツアー 2014(DVD)
クラプトンは、ツアーでうんざりすることとして飛行機や自動車での繰り返しの移動を最大の要因としているが、同時に「どの国に行ってもアメリカの別バージョンのようなものばかり」に出会うことも、やはりツアーに嫌気がさしている理由だという。
その点で、日本武道館はアメリカでもイギリスでもない日本ならでは会場であり、またステージ上の出演者にしっかり注目し、大きな喝采を送る日本のオーディエンスは、日本ならではの存在に違いない。
いずれにせよ、再び日本でエリック・クラプトンのパフォーマンスを堪能できることは、ファンにとってはこの上ない喜びである。