ジェフ・ベック 近年のレパートリー「Danny Boy」
ジェフ・ベックが1年半ぶりに来日する。
横浜でのフェスティヴァル参加に加え、東京と大阪のライヴハウスで比較的小規模なライヴをそれぞれ1回ずつ行う。
【民謡曲が起源の「Danny Boy」】
最近のライヴでは、「Hammerhead」や「Big Block」などのヘヴィーなロックサウンドとともに、「Danny Boy」がそのレパートリーに加えられている。
2014年4月の日本公演でも演奏され、その直前にリリースされたEP盤『YOSOGAI』に収録されていた。
また2014年11月にリリースされたDVD『Live in Tokyo』、さらに2015年5月にリリースされたライヴアルバム『Live+』にも収録されている。
この歌は、現在の北アイルランドが起源の民謡曲「Londonderry Air」に歌詞をつけて歌にしたもので、20世紀になってから多くの歌手に歌われ、広く知られるところとなった。
起源となった北アイルランドのみならず、北米に住むアイルランド系のアメリカ人やカナダ人にとっても国歌的な位置づけを得ている歌であるという。
【ブライアン・ウィルソンのお気に入り】
ジェフ・ベックがこの曲をレパートリーに加え始めたのがいつ頃なのかは判然としないが、2013年の秋にブライアン・ウィルソンとのジョイントツアーで、各公演のアンコールで毎回演奏しており、それ以来ライヴの定番となったようである。
このジョイントツアーの前に、ジェフ・ベックはブライアンのソロアルバムのセッションに参加したが、そのセッションの最中にチューニングを確かめるために、即興でこの「Danny Boy」を弾いた。
それを耳にしたブライアンが突然反応し、話しかけてきたのだという。
ブライアンが話しかけてきたんだ。
もっとも彼が私のほうを見たのは、4日間のセッション中わずか数回だったが(笑)
彼は「その歌は今まで書かれた中で最も美しい歌だ」と言って私にふつうにしゃべってきたんだよ。
ブライアンのお母さんが彼のために聞かせてくれた最初の歌だったらしく、決して忘れないと言っていた。
ジェフ・ベックがこのような民謡を取り上げるのは決して珍しくない。
2010年4月に来日した際も、「Mná na h-Éireann」を演奏していた。
この曲もアイルランド民謡で、タイトルは「アイルランドの女性たち」と言う意味らしい。
また、さかのぼること1968年、ジェフ・ベック・グループでリリースした『Truth』には「Greensleeves」が収録されているが、この曲もイギリスの民謡である。
【広くカヴァーされる「Danny Boy」】
北アイルランドが起源の民謡とはいえ、上記のとおりアメリカでも伝統的な歌として知らており、古くはジュディ・ガーランドやアンディ・ウィリアムズなども歌っている。
1990年代初め、エリック・クラプトンはイギリスのTVインタビューを受けたときに、この「Danny Boy」を演奏した。
歌はなく、アコースティック・ギターによるインストルメンタルとして演奏されている。
この演奏はオリジナルアルバムには収録されていないが、1992年に大ヒットしたシングル「Change the World」にカップリング曲として収録されリリースされた。