ジェフ・ベック 70歳の誕生日に掲載された「ギター・ワールド」誌インタビュー(その5(最終回))

 

Q. DVD『Performing this Week … Live at Ronnie Scott’s』では、あなたの全キャリアを網羅したセットリストになっています。

収録曲のそれぞれがあなたにとって特別な意義を持っているのですか?

 

 

 

タル・ウィルケンフェルド(ベース)やヴィニー・カリウタ(ドラム)とバンドを始めた頃、まだ一緒に演奏できる曲が足りない状態だった。

 

それならば、ちょっと過去に戻って初期の曲を加えたらどうだろう、と考えたのだ。ロッド(・スチュワート)がいなくても、「People Get Ready」などの曲をやることにした。

 

このおかげで私のキャリアの中でもかなり昔までさかのぼることになった。かつての私を知らない人たちでも、1966年や1968年にどんな曲をやっていたか、大体わかってもらえるだろう。

 

最新のアヴァンギャルドなテクノの曲で人を驚かせるのに比べて、みんなに聞きやすい準備をするほうがいいだろうし、実際聴きやすくなったと思う。

 

セットリストの最初のほうに、「Eternity’s Breath」(ジョン・マクラフリンの1975年リリースのアルバム『Visions of the Emerald Beyond』より)と「Stratus」(ビリー・コブハムの1973年リリースのアルバム『Spectrum』)の2曲を選んだのは、みんなにこういう音楽があることを知ってほしかったからだ。もちろん、演奏するのが楽しいからだけどね。

 

私はジョン(・マクラフリン)が作った曲のメッセンジャーなのだ。私はみんなに彼の音楽を聴いて欲しい。もしみんなが私のヴァージョンを気に入ってくれたのなら、私の仕事は完了したことになる。

 

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(注:ジョン・マクラフリン(1942~)はイギリスのギタリスト。ジャズ・フュージョン・バンド「マハヴィシュヌ・オーケストラ」の主要メンバー。このバンドには、後にジェフ・ベックと共演するヤン・ハマーや、下記で述べられているビリー・コブハムらがメンバーとして参加していた。)

 

 

 

ジョンはいつも時代の先を行っていた。今でもそうだ。彼はもっと知られるべき人物だが、実際はその半分しか認められていない。これらの曲は心からの尊敬をこめて演奏している。

 

今の音楽界にいる子供レベルの人たちと本当のミュージシャンをはっきり区別するために、ジョンは現在アコースティックを弾いているのだ。アコースティックだとごまかしは効かないからだ。

 

ビリー・コブハムの『Spectrum』は、ヤン・ハマーをフィーチャーしたマハヴィシュヌ・オーケストラのレコードと一緒に、その時の私を生き返らせてくれたアルバムだった。ちょうどエルヴィス・プレスリーの「Hound Dog」を初めて聞いたときの興奮と同じレベルのものだった。

 

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(注:ビリー・コブハム(1944~)はアメリカのドラマー。ジョン・マクラフリンのほかにマイルス・デイヴィスとも共演している。)

 

 

 

私はこれらの音楽にインスパイアされて、同じような曲を演奏し始めた。

 

『Spectrum』でトミー・ボーリンが弾いているギターは素晴らしい。彼が亡くなりとても悲しいよ。

 

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(注:トニー・ボーリン(1951~1976)はアメリカのギタリスト。ビリー・コブハム『Spectrum』によりその腕を認められ、後にディープ・パープルにも加入したが、25歳の若さで亡くなった。)

 

1976年に私がヤン・ハマーとツアーに出ていたとき、彼もツアーに出たのだが、マイアミで行った公演の後に亡くなった。私は翌朝になってこの知らせを聞かされた。

 

 

Q. レス・ポールからギター・プレイヤーとして受けた影響について教えてください。

 

レスがいなくなってしまい、とても寂しい。でも彼は素晴らしい人生を歩んだし、彼は私たちにギター以上のものを残してくれた。

 

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私はずっと彼の大ファンだったし、彼のギター演奏にはとてもインスパイアされた。生前の彼と知り合いになるチャンスがあってとても良かったよ。

 

(終わり)

 

「その1」から「その4」までは以下リンクを参照:

70歳の誕生日に掲載された「ギター・ワールド」誌インタビュー(その1)

70歳の誕生日に掲載された「ギター・ワールド」誌インタビュー(その2)

70歳の誕生日に掲載された「ギター・ワールド」誌インタビュー(その3) 

70歳の誕生日に掲載された「ギター・ワールド」誌インタビュー(その4)