ジェフ・ベック 70歳の誕生日に掲載された「ギター・ワールド」誌インタビュー(その4)
Q. 2010年の『Emotion & Commotion』で64人編成のオーケストラとレコーディングするというアイデアは、どのように発展していったのですか?
1966年にブライアン・マシューズ(イギリスのラジオ・ショー「サタデー・クラブ」のパーソナリティ)とやったインタビューを聞いていたときだ。彼に「将来どんなことをやりたいのかな?」と聞かれて、私は「大きなオーケストラと一緒に演奏したい」などと答えているのだ(笑)。
信じられないよ、その時ですら本気にそう思ってはいなかっただろう。
当時ティナ・ターナーを見て、フィル・スペクターが大規模でパワフルなストリング・セクションと一緒につくる素晴らしい音楽を聞いた。またほかのポピュラー音楽でもオーケストラが使われているのを聞いたことがあった。
(フィル・スペクターとティナ&アイク)
パワフルな音楽のためには大規模なオーケストラが最高のバックになる、と私は考えたのだ。オーケストラを前にしたらギターがどのような音を奏でるか聞いてみたい、という私の願いはずっと残っていた。
最近になって私は、EMIクラシック部門にリリースしてもらいたいアルバムのために、マーラーの交響曲第5番を演奏した。EMIはとても気に入ってくれて、さらに12曲やって欲しいと言って来た。
しかし交響曲第5番をマスターするのにもすごく時間がかかったから、ほかの曲をやるのには半年かかるだろうと想像した。そこでこのアイデアを使って、自分自身でやりやすくするために、すばやくマスターできる比較的シンプルなメロディーを選んで、うまくいくか試してみた。みんなその出来栄えを気に入ってくれたようだった。
「Emotion & Commotion」では、もともと二枚組みCDセットにしようと考えていた。1枚目「Emotion」でオーケストラとともに演奏し、2枚目「Commotion」ではバンドと演奏する、というものだった。
ある日スタジオに入ると、(プロデューサーの)スティーヴ・リプソンはオーケストラとバンドのトラックを連続させて聞かせてくれた。彼は「こういうのはどう思う?」と聞いたので、私は「いいね。これで続けよう!」と答えたのだ。
私はスタジオに入るときはいつも、前の日に何をやったか忘れていた。スティーヴがいくつかのデモをつなげて聞かせてくれるまで、何をやっていたかなど分からないままだった。こういうものを無理やりつなげた感じだったのだ。
作り出した音は素晴らしい楽曲となったが、どのようなものが出来上がるかは決まっていなかった。自然と出来上がった感じだった。
Q. 『Emotion & Commotion』のオーケストラは素晴らしい演奏で、『Blow by Blow』の「Diamond Dust」を彷彿とさせます。『Emotion & Commotion』と『Blow by Blow』にはつながりがあると思いますか?
アプローチの仕方としては『Emotion & Commotion』は『Blow by Blow』と変わらない。
両方ともレコーディングは経験や感覚で行われた。何も計画されていなければ、出てきたものが結果となるだろう。
私はアルバム1枚分の曲を用意して、スタジオをブッキングし、レコーディングを進める、といった細かい計画を立てたりはしない。後押しされる必要があるのだ。仕事を始めるよう私の背中を押してもらう必要がある。私はそういうやり方だ。
家でいいアイデアを思いついても、誰かが来て私を引きずり出してくれるまでずっと家にこもっているのだ!
Q. 『Emotion & Commotion』で最も野心的ともいえる曲のひとつに、プッチーニのオペラ曲「Nessun dorma」があります。またオペラ歌手オリヴィア・セイフとレコーディングした「Elegy for Dunkirk」も収録されていました。
あなたはクラシック音楽のファンなのですか?
(注:オリヴィア・セイフはイギリスのソプラノ歌手。『オペラ座の怪人』などに出演している)
ちょうどあの頃、私はマーラーの交響曲第5番をレコーディングし、ほかにもレコーディングできそうな曲を探していた。
私のお気に入りだった曲のひとつであるラヴェルの「Pavane(パヴァーヌ)」を習得し、またロイヤル・アルバート・ホールでの演奏(「ヘンリー・ウッド・ムロムナード・コンサート」のこと)を聴いたりしていた。毎年大規模な音楽祭のプロムナード・コンサートが開かれるからね。
(注:「The Henry Wood Promenade Concerts」とは、通称「BBCプロムス」と呼ばれるクラシック音楽祭。ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで毎年夏に開催される。)
私はロックンロールからはなれ、真面目で実直なメロディへ転向していった。私にとっては研究することの多い分野だったのだ。
(ルチアーノ・)パヴァロッティにはいつも驚かされる。大きく、深い、本当のオペラの歌。その大声がとどろきわたる様は、私の大のお気に入りだ。その彼が見事に歌い上げた「Nessun dorma」を私は試してみたかったのだ。
私のギターは声ではない。パヴァロッティの声ではないのだ。そこで私はこの曲を活気のあるブルージーな曲として演奏した。
この曲で私がやろうとしたのは、「ギターに本来想定されていないことをやる」ということだったのだ。
(続く)
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