エリック・クラプトンが60年代にカバーした「Steppin' Out」という曲
「Steppin' Out」はアメリカのブルース・ミュージシャン、メンフィス・スリムが1959年に録音・リリースした曲である。
エリック・クラプトンはこの曲を1960年代に頻繁に取り上げ演奏した。
あまり知られていない事実だが、クラプトンは1966年、「ザ・パワーハウス」というバンドでギターを弾いていた。
このバンドは、ジョー・ボイドというレコード・プロデューサーが自身の会社「エレクトラ・レコード」からリリースする第一弾レコードのためにのみ結成した、特別編成のバンドである。
メンバーは以下の通り。
エリック・クラプトン(ギター)
ポール・ジョーンズ(ハーモニカ)
ジャック・ブルース(ベース)
スティーヴ・ウィンウッド(ヴォーカル)
ピート・ヨーク(ドラムス)
ベン・パーマー(ピアノ)
当時ポール・ジョーンズとジャック・ブルースは「マンフレッド・マン」の、スティーヴ・ウィンウッドとピート・ヨークは「スペンサー・デイヴィス・グループ」の、それぞれメンバーであった。
ドラムスには当初ジンジャー・ベーカーの名前が挙がったが、参加不可能であったため、ピート・ヨークが抜擢されたといわれている。
1966年3月、このバンドは「Crossroad」「I Want to Know」そしてこの「Steppin' Out」の3曲をレコーディングした。
同じく1966年3月、エリック・クラプトンはジョン・メイオールとともに後に『Blues Breakers with Eric Clapton』に収録されリリースされる曲をレコーディングした。
いまや伝説となったこのアルバムは、ロンドンのウェスト・ハムステッドにあるデッカ・スタジオでセッションが行われ、クラプトンはギブソンのオリジナル・ハムバッキング・ピックアップが搭載されたレスポールを、マーシャルのアンプについなで演奏した。
ここでも「Steppin' Out」をレコーディングしている。
Steppin' Out (Mono Instrumental)
さらに自由な演奏を求めたクラプトンは、1966年ジンジャー・ベイカー、ジャック・ブルースとともに新バンド「クリーム」を結成、7月に活動を開始した。
ここでも「Steppin' Out」が演奏されている。
スタジオ録音のリリースはないが、1968年3月のライヴ・ヴァージョンが『Live Cream Volume II』の最後に収録され、すでにクリームが解散したあとの1972年にリリースされた。
クリームがライヴでこの曲を演奏するときは、ほかの曲ではないアレンジが見られた。
3人で演奏し始めるが、しばらくするとジャック・ブルースが演奏をやめステージを離れ、そのままドラムとギターだけで演奏が続けられたという。
Steppin' Out (Live At Winterland, San Francisco / 1968)
またBBCでのライヴ音源も残っており、1988年4月に『Crossroads』というクラプトンのボックス・セットに収録されてリリース、また2003年にはクリームの『BBC Sessions』にも収録されてリリースされた。