ジョン&ポール アップル創設時のアメリカでのインタビュー
ザ・ビートルズがアップルを設立して、そのプロモーションのためにジョン・レノンとポール・マッカートニーが渡米したときのインタビュー。
時は1968年。「I Want To Hold Your Hand」でアメリカ上陸してからわずか4年後。
その間、全米No.1ヒットを連発、66年にツアーをやめたあと『サージェント・ペパー』で新たな革命を起こしていた。
このインタビューを見る限り、ジョンが主に語っており、他人に媚ることがない彼の存在感は、ポールよりも大きく見える。
一方、ポールの受け答えはファンのことを第一に考えている印象があり、相手に不快な思いをさせないように意識しているのが感じられる。
以下、和訳を載せたが、イギリス人特有の皮肉の利いたユーモアは、日本語にすると味気ないものになってしまうのが残念だ。
とくにジョンは笑顔を見せないで辛辣なことを言うため、「(笑)」などを付すこともしていない。
【アップルについて】
ジョン:アップルはレコード、映画、それらを作るためのエレクトロニクス、そしてグッズ販売なんかをするビジネスだ。
ポール:ビジネスだが、利益追求をするものではない。
利益が上がっても僕たちの懐には入らない。
でもチャリティとも違う。
ジョン:たとえば、もし映画を作りたかったら映画会社に行くだろうが、結局ゴミ箱をいっぱいにして終わりだろう。
結局何もできないまま、アングラで映画を作るしかない。
出来た映画もアングラで出回るだけで、結局誰も観ないままだ。
でも僕らのところに来れば、きちっとしたチャンスを得られるというわけだ。
自由に来てくれていい。
レコーディングするときに、「マイクを貸してくれるかな、僕たちまだヒット曲がないから借りれないんだ」なんて言わなくてすむよ。
ポール:どれくらいの規模になるかはまだわからない。
大きくなると思うけどね。
ちょうど僕らの友達のアレックスをエレクトロニクスの部門に呼び込んだところなんだ。
彼はすごい男で、信じられないものを発明しちゃうんだ。
【ビートルズもまたツアーをするのか?】
ジョン:ビートルズはもう2年間ツアーをしていない。
僕たちは着陸してしまったからね。
でもステージに立つ可能性はあるかもね。
いまアップルでやっているエレクトロニクス機材を持って、いつかニューヨークに行くかもしれない。
ツアーはいやだった。でも旅行としては悪くなかったね。
何か月も家に帰れなかった。
でもインドでいい休暇を取って、戻ってきてから今はビジネスマンだ。
この後はアップルに取り組むんだ。
【ポールのLSD発言について】
ポール:インタビュアーが僕にJSDをやったか?って聞いたから、僕はYesって答えたんだ。
ジョン:そしたらみんながポールに「なんであんなこと言ったんだ!? なんであんなこと言ったんだ!?」って聞いたんだ。
ポールは聞かれたから答えた。でもこの映像は公表しないでくれ、こんなことは誰にも伝えたくない、ってポールは言ったんだ。
ポール:質問を受けたから答えただけだ。
そしたら大騒ぎになった。
ただ真実を述べただけだよ。
時々ひどいことになるよ。
【アメリカでいろいろな暴動が起こっていることについて】
ジョン:もちろん知っているよ。
イギリスにだってテレビはあるんだ。
【64年のビートルマニアについて】
ジョン:いろいろなところで起こったことだ。
ポール:みんな何かに不満を持っているように見える。
だからいろいろ騒ぎ立てるんだ。
僕たちが彼らのためにできることがあるんなら、それをやらなければいけない。
アップルはそのためにできたんだ。
別に満足してもらう必要はない。
僕たちはみんなに手を差し伸べるだけだ。
わかるだろ?
ジョン:(インタビュアーに対して)昔は君は魅力的でもっといいやつだったけどな。
(インタビューアー:ファンの群衆に囲まれなくなってさみしく感じているか)
ジョン:感じないね。
【アップルで舞台演劇をやる予定は?】
ジョン:アップルでは演劇は考えてない。
ポール:僕はロンドンのナショナル・シアターでジョンの本を演劇にしたものをやってもいいと思ってる。
ポール:僕たちは今でも演奏するし、歌も歌う。
何も変わっていない。
単にツアーをしなくなっただけだ。将来またやるかもしれないけど。
聴衆がどんどん大規模になって、自分の演奏が聞こえなくなるんだ。
ジョン:マスクをかぶってこん棒を振りかざし、脅しに来るんだよ。
ポール:(移民が増加していることは)どの国でも同じ問題だと思う。
イギリスでも同じだ。
問題の度合いが小さいだけだ。
誰か別の人を気に入らないってことは、どこに行ってもあることだよ。
ジョン:(ケネディ大統領やキング牧師の)暗殺は恐ろしいことだ。
世の中で何が起こっているか、ちゃんと追いついていけるようにしている。
ポール:なんでも同じだけど、誰かが問題を起こしてしまうんだ。
それが誰なのかがわからないんだけどね。(笑)
(インタビュアー:あなたたちの人気がなくなってビートルズが落ち目になるだろう、っていうことは前からみんなが言っている。
もちろんまだバブルははじけていないし、はじけそうにも見えないが、)
ジョン:バブルが飛んで行っちゃっただけだ。
【あなたたちが別々に行動することは考えてはいないか?】
ポール:僕たちはビートルズのままだ。
ジョン:同時にアップルでもある。
ポール:僕たちは何も計画していない。
今アメリカにいるのも、自然とそうなっただけだ。
またアメリカには来るだろうし、何が起こるか分からないよ。
ジョン:(アメリカでの経験で一番の出来事は?)メンフィスから逃げ出したことだ。
パリにいた時に「I Want To Hold Your Hand」がNo.1になったことを聞いた時のことはよく覚えているよ。
素晴らしいことだった。
牛乳でお祝いの乾杯をした。
そうなるなんて期待していなかった。
音楽のマーケットに足がかりを得ただけで、マーケットに頭から突っ込んだわけじゃない。
【最近のはやりの音楽についてどう思うか?】
ジョン:ニールセン*1(に聞けばわかる。)
ポール:音楽業界は上がり下がりあるよ。
ジョン:またビル・ヘイリーが出てくるよ。
*1:「ニールセン」は情報調査会社。