チャーリー・ワッツに学ぶ英国ダンディズム その1
ザ・ローリング・ストーンズのチャーリー・ワッツは、そのファッション・センスの高さでもよく知られている人物だ。
すでに2年前のものになるが、アメリカ版「GQ」誌に、チャーリー本人が語った自身のファッションについてのインタビューがあるので、紹介したい。
出典:
ジャズはもちろん大きな影響があったが、洋服への興味は父親から受け継いだものだ。
別に父が大きなワードローブを持っていたわけではない。
彼は私をよく仕立屋へ連れて行ってくれた。
ロンドンのイーストエンドにユダヤ人の男がいて、彼が服を仕立ててくれるのだ。
その後、私はハリウッド・スターに興味を持ち始めた。
特にビリー・エクスタインなどのポップ歌手たちが好きだった。
彼は特徴のあるカラーのシャツを着ていて、見栄えのいい男だった。
その当時(50年代から60年代)のジャズ・ミュージシャンたちは、とてもハンサムであったと同時に、ファッションセンスもよかった。
デューク・エリントン、レスター・ヤング、チャーリー・パーカー、マイルス・デイヴィスたちだ。
マイルスが『マイルストーン』のアルバム・ジャケットで緑のシャツを着ているのを見て、みんなが緑のシャツを着たがったものだ。
デクスター・ゴードンも当時を代表するミュージシャンで、アルバム『Our Man In Paris』のジャケットではカラーにピンをしている。
今、私はこのピンを何百も持っているよ。
これらのミュージシャンたちの素晴らしいところは、実際に着こなしている、ということだ。
ただ単に服を着て、オフィスに行き、帰ってくるだけではない。
その服を着て、一晩を過ごすのだ。
そのスーツで演奏する。
もっともスーツ姿でどうやって演奏したのか、私にはよくわからないが。
私はステージではスーツを着ない。
半袖のシャツかTシャツを着ている。
まだ若かったころはジャケットを着て演奏していたこともあったが。
メンズの仕立屋では、客のほうからデザインについて口出しすることはないのが普通だ。
私はロンドンに行きつけの仕立屋が2名いる。
もし私がダブルのスーツをノッチド・ラペルで仕立てるように注文しても、彼らは作らないだろう。
ダブルのスーツにはいつもピークド・ラペルだ。
(左がノッチド・ラペル、右がピークド・ラペル) 出典:History of the Suit
仕立屋たちには、決してやってくれないことがあるものだ。
そんなとき、なぜだろう、やってくれてもよさそうだが、と思う。
しかし、誰かほかの人がノッチド・ラペルのダブル・スーツを着ているのを見ると、やっぱりおかしく見える。
これは何百年も続いたスーツの仕立ての方法で、私はその伝統を重んじているんだ。
バンドのほかのメンバーと比べて、私はとても楽にスーツを着こなしているという人がいるようだ。
わたしはとても旧式で伝統的なスタイルを持っている。
居づらく感じることもあり、またフォトセッションに行くのが私は好きではない。
私はスタイリストたちのやり方が好きではないのだ。
もしあなたがフレッド・アステアであったら、あなたはいったんスーツを着たら一日中着ているはずだ。
しかし、スタイリストたちがやるのは、ただ単に身につけるだけだ。
だから、ローリング・ストーンズと一緒にいるといつも場違いに感じるよ。
メンバーとしてではない。バンドが私にそんな思いをさせた事はない。
私のファッション・スタイルのことを言っているのだ。
出来上がった写真を見てみると、そこには革靴を履いた私と、スニーカーを履いたほかのメンバーが写っている。
スニーカーは格好良く見えるかもしれないが、私は嫌いだ。
私はファッションが好きだ。
ファッションは、追及し、工夫してみることができる。
しかし、自分に何が似合うかを理解するまで時間がかかる。
その時にまだファッションに興味があればの話だが(笑)
ファッションに興味を持ってから、私はどこでも行ける店には行ってみた。
そして自分に合うか試してみたが、まだ私は小さすぎたため、どれも合うものはなかった。
だから、ただ服を見て合うかどうか見てみるだけだった。
大人になってから自分の好みがはっきりしてきたのだ。
(「その2」へ続く)