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ボブ・ディラン「Duquesne Whistle」は何を歌っている曲か?

ボブ・ディラン

2012年にリリースされた『テンペスト』の一曲目がこの「Duquesne Whistle」である。

まず第一に「Duquesne」を”デューケイン”と読むことが難しい。

 

このデューケインはペンシルヴァニア州にある人口が5千人超の町である。

この町には「デューケイン・ワークス」という鉄鋼会社があった。

デューケイン・ワークスは「カーネギー鉄鋼」の傘下にあり、20世紀初頭の鉄鋼業の最盛期には、この町の産業の中心となっていたようである。

 

この時期にニューヨークとこの地を結ぶ鉄道があった。

ディランの曲で歌われているのはこの鉄道のことである。

つまり「Duquesne whistle」はデューケインの駅から出発する汽車の汽笛のことであり、歌詞には汽笛を擬人化して歌っている部分もある。

 

Can't you hear that Duquesne whistle blowing
Blowing like the sky is gonna blow apart
You're the only thing alive that keeps me going
You're like a time bomb in my heart

 

デューケインの汽笛が聞こえるかい?
空が吹き飛ばされてしまうような汽笛の音だ
お前は私を活気づける唯一の存在
私のハートにある時限爆弾のようだ

 

デューケインの産業都市としてのピークは1930年代だった。

その後1960年代を境に町はどんどん縮小され、現在はかつての産業の名残も見当たらない状況らしい。

財政的にも苦境に陥り、1991年には「財政悪化自治区」に認定された。

さらに2007年には地元のハイ・スクールも閉鎖され、人口も1930年代の4分の1にまで減っている。

 

   

 

ディランの歌には、このようなデューケインの現状を嘆くようなフレーズは出てこない。

上に引用したような、ポジティブな内容が、現在形で表現されている。

あくまで戦前の、最盛期だったころのデューケインを思い浮かべて書かれているように聴ける。